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旧東広島市内唯一の醤油屋 135年の歴史を刻む「立本醤油」

  • 2025/09/23

目次

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1890年創業の老舗

広島県東広島市志和町。緑豊かな志和盆地に、明治23年(1890年)創業の「立本醤油」があります。家庭で味噌や醤油を仕込むのが当たり前だった時代から、135年にわたり地域の食卓を支えてきました。今では市内で唯一残る醤油屋として、変わらぬ香りと味を守り続けています。

立本醤油
志和町にある立本醤油

東広島市内にはかつては多くの醤油屋が点在し、その中でも志和盆地の澄んだ空気と良質な地下水は醤油づくりに最適とされていました。

立本醤油
穏やかな日の光が差す醸造場内

創業当時の配達方法は木樽を自転車に積み、近くの家庭に直接届けるところから始まりました。やがて車での配送が始まり、幅広く地域の暮らしに溶け込んでいきました。

次第に地域の暮らしに欠かせない存在となっていったのです。

立本醤油
醸造場を示す看板にも年季を感じる

若き4代目の決断

平成2年(1990年)、先代の急逝により、当時35歳だった立本彰氏が4代目を継ぎました。29歳まで酒販業に携わっており、その後稼業を継ぐために手伝っていたとはいえ、突然の家業継承は大きな挑戦でした。しかし「家業を守りたい」という一心で醤油屋に入り、伝統を受け継ぎながらも新たな一歩を踏み出します。

創業以来の代表銘柄「峰醸醤油」に加え、九州ほど甘くなく、関東ほど辛すぎない「あまくち醤油」や、添加物を一切使わない「志和のしょうゆ」、国産丸大豆と小麦にこだわった「国産丸大豆醤油」を次々と開発。

立本醤油
開発した商品たち

さらに時代に合わせ、小瓶やペットボトルでの販売を導入し、共働き世帯のニーズに応える「べんりだし」や、東広島産の野菜を使った「ドレッシング」など新商品も展開しました。

地域に愛される味を未来へ

現在は、スーパーや道の駅、市内配達などで商品を届けています。「長く続けられてきた理由は、先代から引き継いだ醤油への思い、お客様に喜んでいただけること、そして地域の食文化を守りたいという気持ちです」と彰代表は語ります。

立本醤油
醤油への熱い想いを語る立本彰社長

物流や販売ルートが目まぐるしく変化する今も、「量は多くなくても、食卓に醤油が並び、笑顔が生まれる空間をつくりたい」との思いは揺るぎません。

立本醤油
世代は親から子へ

息子も家業を手伝い始め、次世代へのバトンが確実に渡されようとしています。

135年の伝統が生む一滴

立本醤油の味は、単なる調味料にとどまりません。一滴で料理を引き立て、家族の会話を生み、地域の歴史を今に伝える“文化”でもあるのです。135年という時を重ねてきた醤油屋。

立本醤油

その一滴に込められた職人の誇りと願いは、これからも食卓を彩り続けます。

アクセス

東広島市志和町奥屋2362-2
TEL/082-433-2330 FAX/082-433-3660

立本醤油
立本醤油を支える家族たち
立本醤油

記者の画像

繁澤 聡

広島県東広島市でフリーペーパー「ザ・ウイークリープレスネット」を発行しているスタッフの一人。

楽しいことと、おいしいお酒と、東広島の人が好き。

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