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4氏の市政要望に高垣市長が回答

  • 2025/10/13
高垣市長

 「ザ・プレス」9月25日号では、来年2月で2期目の任期満了を迎える高垣広徳市長について総括。4氏に2期目を評価してもらい今後の要望を聞いた。今号は、高垣市長がそれぞれの要望に対して回答した。(日川)

東広島市議 重森佳代子氏の要望

東広島市議 重森佳代子氏
 1950年生まれ。早稲田大学卒。2015年、東広島市議選に初当選後、19年、23年と連続当選。東広島アカデミーを主宰。

物価高騰と少子高齢化が同時進行する厳しい現状で、市民の暮らしを豊かにする施策で還元すべき

〇現状の施策
 市民生活・地域経済に対し、低所得世帯や子育て世帯への生活支援、保育・学校施設への支援、中小企業への物価高騰対策支援など、機動的な予算措置により、かなりの予算で対応を実施している。

〇課題
 影響が長期化する中、国の財源による支援が常態化しておりこうした支援を打ち切れば、市民の暮らしや地域の事業活動に深刻な影響を及ぼすおそれが生じること。

〇今後の方向性
 市民生活ほか市内経済の実態把握に努めつつ、地域特性に応じた持続的かつ包括的な支援策を講じ、市民生活と地域経済の両面を支える必要がある。

中学校の給食費無償化

〇現状の施策
 国の財源を活用し、物価高騰による保護者負担の増加を回避している。また生活保護世帯や就学援助対象世帯については、すでに実質的な無償化を実施済。

〇課題
 無償化には、長期的かつ大きな財政負担が生じるため、「福祉的支援」か「経済的負担軽減」か、理念の整理が必要であること。全国市長会でも、目的が不明確では、無償化の規模や対象範囲についての議論が進みにくいとの指摘があり、現在、鋭意来年度の小学校給食費の無償化に向け議論が続けられているところです。

〇今後の方向性
 現時点では中学校の無償化の実施は国も考えておらず、国による一律の無償化が実施されるまでは、物価高騰や保護者負担の状況、他の子育て支援との優先度を踏まえ、制度の理念整理や持続可能性の観点から慎重に検討を進める。

シカやイノシシを効率的に捕獲し、ジビエとして処理・加工・販売

〇現状の施策
 有害鳥獣(イノシシ・シカ)の年間捕獲数は約4,000頭で推移している。令和4年度以降、処理加工施設では計画頭数1,500頭を超える受入れを実施している。指定管理者の高い衛生・解体技術により、加工されたジビエは全国的に美味しさが認知され、販売も順調に推移している。

〇課題
 ジビエの需要増により供給が追いつかず、施設の増強が必要な段階にある。施設拡充については関係者の意見を踏まえながら検討する。

〇今後の方向性
 ジビエは農作物被害の軽減に加え、特産品として地域活性化に貢献するものから、今後は地域内経済の循環を促すため、生産から販売までの仕組みづくりが重要。

慢性的な交通渋滞解消

〇現状の施策
 市内の西条市街地を中心とした慢性的な渋滞は、居住人口の増加や新たな企業の立地等により年々深刻化しており、その解消に向けての対策は大変重要であると認識している。その対策として、幹線道路ネットワークの形成による円滑な交通処理を行うため、次世代学園都市ゾーンのまちづくりと合わせ、必要な幹線道路網について、将来人口や交通需要予測をもとに、国や広島県の道路部局と検討を重ね、東広島市域の2050年将来道路網イメージ図を作成した。また市内街路の恒常的に渋滞が発生しているボトルネックの解消に向け県・市連携して取り組んでいる。

〇課題
 将来道路網をもとに、国道2号西条バイパスの4車線化や県道飯田吉行線などの現行の整備路線を促進することとしており、昨年度策定した社会資本未来プランや次世代学園都市ゾーンのまちづくりの2050年将来道路網イメージ図および、中期財政運営方針を踏まえながら、今後、計画期間などを定めた道路整備計画を策定するとともに、国・県管理の道路につきましては、国・県に早期の整備を強く働きかける必要がある。

〇今後の方向性
 吉川地区の半導体関連企業の集積による渋滞対策は、半導体生産拠点の関連インフラ整備を支援する「地域産業構造転換インフラ整備推進交付金」を活用し、県と連携して、マイクロン社周辺の道路をはじめとした、半導体生産や物流に係る道路整備を進めており、今後マイクロン社の工場増設などの大型開発による、さらなる交通渋滞が予測されることへの対策につきましても、交通量調査等の実施による現状の渋滞状況の把握を行うとともに、これらの渋滞要因を分析した上で、道路の4車線化や、交差点改良、信号サイクルの見直しなど効果的な対策を検討し、国や県と緊密な連携を図りながら、実効性のある渋滞対策に取り組んでいきたい。

カタカナが多い、やさしい言葉で説明してもらえば

〇現状の施策
 広報紙の特集ページで、市の重点施策を「なぜ実施するのか」「実施することで何が変わるのか」について、特に新しい施策やカタカナことばなど、なじみの薄いものはイラスト等を用いて分かりやすく解説し、施策の本質の理解に努めている。

〇課題
 広報紙だけでは、掲載内容に限りがあったり、情報に触れる機会が少なかったりという課題がある。

〇今後の方向性
 広報紙に限らず、ホームページにおいても重点施策を体系的に整理し、イラストや動画などを用いて分かりやすく伝えられるよう、改善に向けた取り組みを行っている。広報紙と連動して、市民ポータルサイトやSNS(X、Facebook、Instagram)、FM東広島、カモンケーブルテレビなど複数の広報媒体を活用し、同じテーマを同じ時期に集中的に発信することで、より多くの機会に、幅広い世代の方に届くよう、今後も政策を理解してもらう広報に力を入れていく。

東広島商議所副会頭 石井裕一郎氏の要望

東広島商議所副会頭 石井裕一郎氏
 1965年生まれ。早稲田大学卒。NHKでチーフプロデューサーを経て、2022年賀茂鶴酒造代表取締役社長。現在東広島商議所副会頭。

酒蔵通りの景観保存について、文化財保存、住んでいる人、産業振興が三位一体で議論される必要がある

〇現状
 西条酒蔵通りは、酒造会社の多くの建物や煙突などが存在し、宿場町から醸造の町へ発展した地区としての特徴が残され、また、JR西条駅に近接することから、観光拠点としてのポテンシャルも非常に高い地区の特性を有している。

〇課題
 居住地としての利便性が高い地区でもあることから、これまで建物更新が頻繁に行われ、一般住宅においては古くからの建物が地区内に多く残されていない状況にあり。重要伝統的建造物群保存地区の指定を最終目標とする中で、新旧の一般住宅が混在し、新たに居住される方々も多くおられる状況を踏まえ、地区内に居住される方々が暮らしやすい、また、観光拠点としてより付加価値を高めていくことが可能となるまちづくりを目指していく必要がある。

〇今後の方向性
 今後は各酒造会社が所有する貴重な建築物について史跡登録を進め保存していくとともに、酒蔵地区の居住者・地権者や商店主、関係団体等で構成する協議会を設立し、その中で、統一感のあるまちなみの形成のための景観ルールづくりをはじめ、酒蔵地区の活性化に資する様々な内容について、関係者の皆様と一体となって検討を進めていく予定。また、将来の東広島を担う子供たちや、地元関係者の皆様を主な対象者とした、酒蔵地区の歴史等について学ぶためのイベント等の開催を通じ、酒蔵地区への愛着を育むとともに、酒蔵地区の将来像について考える機会の創出も図っていきたい。

学園都市なのに若者と市の玄関口にある酒蔵通りが結びつかない(行動範囲が下見地区中心)

〇現状、課題
 これまで、町家プロジェクト(学生の拠点づくり)や、街なか賑わい創出(アルカモン)など、いくつかの事業を実施してきているものの、平日、休日を問わず、中心市街地において、大学生などの若者の人通りが少なく、賑わいや活気が乏しいことが現状である。

〇今後の方向性
 西条酒蔵通りの歴史的町並みや伝統的酒造りといった文化資源を活かした中心市街地の活性化に取り組んでいくとともに、市民が集い、憩い、イベント開催時には多くの方が集まる場となる魅力的な都市空間としての「大屋根広場」の整備を契機として、酒蔵地区をはじめとした中心市街地の広いエリアにおいて、人々を呼び込む仕掛けを作り、大学生などの若者に魅力を感じていただけるよう、中心市街地の賑わい創出に向けて取り組んでいきたい。

多国籍・他宗教に即応した体制づくり(多国籍、他宗教の外国籍人口が増えており、それぞれの生活にあった体制づくり)

〇現状の施策
 外国人相談窓口の設置、多言語による情報発信、日本語教室などの日本語学習機会の提供など、外国人市民の生活環境の充実を図るための施策を展開している。
また、異なる文化、生活、価値観等への理解を深めるため、出前講座の実施等を通して多文化共生への意識啓発を行っている。

〇課題
 外国人が必要としている東広島市での生活に必要な情報を入手できているか。また、外国人市民に対する偏見、差別があることも解消すべきと捉えている。

〇今後の方向性
 デジタル技術の活用や多言語対応の強化、日本語教室の充実、「やさしい日本語」の普及などを通じて、外国人市民の生活環境を向上させ、日本人市民との相互理解を進める。

前日本酒造青年協議会長 前垣壽宏氏の要望

前日本酒造青年協議会長 前垣壽宏氏
 1974年生まれ。成城大学卒。2002年、賀茂泉酒造に入社。19年11月、第4代目の社長に就任。前日本酒造青年協議会長。

酒蔵通りで準備が進む重伝建指定は、開発から保護する珍しい事例であり、必要な建物を点で結び守る工夫が必要

〇現状の施策
 現在も稼働する酒造施設は、東広島の歴史を物語る文化財であり、酒蔵通り地区の景観を形成する核であることから、地区全体を「面」として保全するための景観ルールのほか、国の登録有形文化財や史跡制度を活用した「点」としての保全にも取り組んでいる。令和6年2月には、白牡丹酒造延宝蔵、賀茂鶴酒造1号蔵、旧広島県醸造試験場、福美⼈酒造⼤⿊蔵の 4 か所が、「西条酒蔵群」として国内の酒造施設では初めて国史跡指定されている。

〇課題
 史跡等の保護を進めるためには、現在稼働中の酒造施設も多く、酒造会社の企業活動と文化財保護の両立について、酒造会社との対話を重ねていく必要がある。

〇今後の方向性
現在史跡指定されている他にも酒蔵通り地区には史跡として価値のある文化財が多く存在しており、関係者の理解と協力を得ながら、史跡の追加指定を目指して取り組んでいく。

多くの大学生が卒業後も東広島市で就職・定住できるようなサポート

〇現状の施策
 大学卒業後も若者が地域に根づき、就職・定住できるよう、企業との連携を図りながら、多様な人材の活躍の支援に取り組んでいる。

〇課題
 人口減少による人材不足が続き、就職市場では売り手優位の状況が進んでおり、大学生も有名な企業、福利厚生等の充実した企業へ就職する傾向にある。

〇今後の方向性
 市内企業の採用力を強化するとともに、大学生を含む若年層に対してのPRを支援する。また、市内企業のインターンシップ実施を伴走支援することで、大学生とのマッチングの機会を創出し、市内企業への就職に向けた取組みを促進する。今後も大学の取組みと連携を図りながら、本市に興味、関心を持っていただく施策を展開し、卒業してからも選ばれるまちを目指していく。

日本酒の魅力を広めるために、市在住者は満19歳を迎える年度の4月から飲酒可能とする特区の申請

〇現状、課題
 面白いアイデアだが、飲酒年齢は「未成年者飲酒禁止法」によって全国一律に定められている。この趣旨は、未成年者は心身ともに発達途上にあり、アルコールによる健康被害(脳の発達障害、肝臓障害、急性アルコール中毒など)を受けやすいなど、未成年者の健全な育成の保護を目的として、未成年者を社会全体で守るための枠組みとして設計されている。このことから、特区を活用して例外的に19歳からの飲酒を可能にすることは難しいのではないか。

〇今後の方向性
 若年層への日本酒の魅力発信は、飲酒解禁年齢の引き下げではなく、教育・体験・文化的にアプローチを行っていく。

子育てネットゆめもくば理事長 村若尚氏の要望

子育てネットゆめもくば理事長 村若 尚氏
 1956年生まれ。呉高専卒。アリクデザインスタジオ勤務。2006年~子育てネットゆめもくば理事長。

子ども一人ひとりの「やりたいこと」に先生が寄り添い、子どもの能力を伸ばす教育に改革

〇現状の施策
 第3期東広島市教育振興基本計画に基づき、ICT活用やコミュニティ・スクールの導入を進める中で、小規模校では自由進度学習や地域と連携した探究活動など、個性と主体性を育む特色ある教育を展開している。

〇課題
 近年、不登校の子供や特別な支援を必要とする子供、日本語指導を必要とする子供等が増加しており、学校現場における子どもの多様化が一層進んでいる。

〇今後の方向性
 西条独創教育をはじめ、本市の教育の核には『誰一人取り残さない』という理念があり、子どもに寄り添い共に学ぶ教師の志を基盤に、子どもの多様性に応じた対応や地域・学校間の連携を通じて、教育の質の向上を図っていく。

小児科医と産科医が不足している(小児科の受診予約が取れない、夜間や救急当番は待ち時間が長い)

〇現状の施策
 小児科・産科医の確保に向け、広島大学への寄附講座設置による医師増員、市内での小児科開業支援、小児救急や分娩手当への補助など、医療体制の充実の支援を行っている。

〇課題
 地域の小児科医・産婦人科医の高齢化、小児科診療所の不足感、軽症者による救急利用の増加により医療現場においてひっ迫が起きている。

〇今後の方向性
 広島大学との連携による寄附講座の継続や小児科診療所の誘致、適正受診の推進、さらに小児科・産婦人科医の偏在是正と確保に向けた国・県への要望を継続する。

希望の保育園に入園できない隠れ待機児童を解決するための保育士の確保

〇現状の施策
 令和5年度から強化した保育士確保策(7年間の市独自給付による就労継続支援)により就職した保育士が今後数年間は定着する効果があると見込んでいる。奨学金返済支援や住宅借上支援などを含む各種確保策の充実によって、保育士数が着実に増加している。

〇課題
 保育士養成校の定員廃止などにより将来の保育士不足が懸念される。

〇今後の方向性
 中高生に対する保育に関する講座の実施や職場環境の見直し等、保育職場の魅力の向上及び発信によって、中長期な視点で保育士の確保及び定着を推進する。

子育て世代の居住空間を分散化(例:中心市街地から離れた地域に家を購入した新婚家庭には給金を支給)

〇現状の施策
 中心市街地から離れた地域(人口減少地域)への総合対策として、農林水産業や観光、住まいなどを横断的に支援するとともに、子育て世帯の移住促進に向け、親世帯との同居や移住に伴う住宅リフォームへの補助を今年度から開始している。

〇課題
 今年度からの取組みであることもあり、利用を増やすためにも、周知が必要と感じている。

〇今後の方向性
 二地域居住など新たな暮らし方を踏まえ、移住・定住の促進と地域活性化に取り組むとともに、子育て世代が人口減少地域を居住先として選びやすくなるよう関心の喚起を図っていく。

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プレスネット編集部

広島県東広島市に密着した情報を発信するフリーペーパー「ザ・ウィークリープレスネット」の編集部。

東広島の行事やイベント、グルメなどジャンルを問わず取材し、週刊で情報を届ける。

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