
消防設備点検と、不特定多数の人が利用する特定建築物の点検を柱に事業を展開する赤防株式会社(本社・東広島市西条町下見、谷口守社長)。「市民の生命と財産を守る」ことを仕事の原動力にしながら、IT(情報通信技術)を見据えた新規の事業にも積極的だ。(日川剛伸)
― 創業は2012年です。
脱サラをして起業しました。サラリーマン時代に防災メーカーに勤めていたことから、消火器や火災報知器など消防用設備の点検が会社のスタートになりました。ただ、東広島での生活は初めて。東広島商議所青年部の活動を通して人脈を広げながら、仕事の受注を増やしていきました。創業当初、同業者では珍しかったホームページを立ち上げたことも新規の取引先の獲得につながっていきました。
― ターニングポイントは。
20年のコロナ禍で建物内の消防用設備の点検が滞留したことです。人の流れが止まり、事業主さんから「売り上げが下がり、点検費用が捻出できない」という声が相次ぎました。そこで着目したのが、特定建築物の点検・調査です。コンクリートのひび割れや雨漏りなどの外壁調査と、給排水設備や換気設備などの内部調査は、建築基準法に則って行います。消防用設備点検の法令と似通っていることから、ツートップの会社体制にしようと。消防用設備点検の資格以外に必要となる一級建築士や特殊建築物等調査資格者をそろえ、特定建築物の点検・調査をスタートしました。
― ドローンを利用した建築物の点検・調査にも着手されました。
高層建築物の外壁調査では、目視の範囲は限られます。高層階の調査をどうするかと考えたとき、たどり着いたのがドローンでした。そのタイミングで、東広島市と大学がドローンを利用して市のため池の維持管理などの課題を解決する共同研究を進めていることを知り、弊社も、調査手法の研究に参画しました。調査手法のスキームを確立し、新年度からドローンの利用を本格運用しています。一方で、護岸や橋脚などの点検・調査に水中ドローンを利用し、事業展開していくことも考えています。国交省も推奨しており、関係者と協議を重ねながら実証実験を進めていきます。


― (公財)ひろしま産業振興機構から、中小企業成長プラン策定支援事業の発行を受けました。
第三者機関からお墨付きをいただいたことは、今後の事業展開の後押しになりますし、金融機関の融資を受けるアドバンテージにもなります。ドローンを活用した革新的で独創的な取り組みが評価されたのかな、と思っており、デジタル技術を活用した、調査・点検のリーディングカンパニーを目指し、決意を新たにしています。
― 求めている社員は。
人の生命と財産を守ることが、会社の根底にあり、一にも二にも、そのことに共感できる人。資格が必要な仕事ですから、入社にはハードルが高いイメージがありますが、入社後に、補助員として働きながら、資格を取得してもらうので安心してください。現在、18人の社員がいますが、うち5人は女性スタッフ。女性も大歓迎です。
― これからの思いは。
仕事を通して、社員と家族がいかに幸せになれるか。そのために何をすべきかを考え実行することが、私の役割だと思っています。
もう一つは、子どもや孫世代が、大人になったとき、東広島市に住んで良かったと思えるよう、事業を通して、社会の基盤となるインフラの安心・安全を支えていくこと。会社の使命であり、次世代の東広島市のまちの発展にもなると信じています。
企業情報
〒739-0044 東広島市西条町下見3661-1
TEL:082-436-6662
FAX:082-490-3361
2012年創業。主な事業は消防用設備と特定建築物の点検・調査。現在の社員は18人。主な取引先は全国各地の官公庁や不動産会社、ビル管理会社など多数。年間の点検・調査は4000件に上る。
谷口守さんプロフィル
1977年、京都府生まれ。京都府の高校を卒業後、防災メーカーのヤマトプロテック勤務。2012年、東広島市で起業し、赤防を興す。