
東広島市黒瀬町乃美尾の専業農家・仁井内孝治さん(53)が育てるグリーンレモンの収穫が最盛期を迎えている。黒瀬初のレモン栽培に挑戦して5年目。寒冷地で工夫を重ね、爽やかな香りの「黒瀬レモン」を特産品に育てようとしている。
秋から冬が旬

23㌃の畑には、2021年に植えた約145本の苗が元気に成長し実をつけている。「今年は記録的な猛暑だったが、木への影響はなく量・質ともに期待できそう」と笑顔。グリーンレモンは10月から12月中旬、イエローレモンは12月下旬から2月初旬に掛けて収穫する。1本あたり30~50㌔、年間5~6㌧の収穫を目指す。
出荷先は、とびしま柑橘工房(本社・黒瀬町)やJAとなりの農家(黒瀬・高屋各店)、ゆめタウン黒瀬。地元で育ったレモンが、地域の店頭に並びメレンゲやレモンケーキなどの加工品としても活用され、人気が広まっている。仁井内さんは「寒冷地ならではの香りの豊かなレモンとして大切に育てていきたい」と話す。
レモンの香りに感動
栽培のきっかけは、レモン好きの仁井内さんがレモン農家からもらった採れたてのレモンの香りに感動したこと。自分でも栽培してみたいと考えたが、周りの人からは「黒瀬は寒いからレモンは育たんよ。やめときんさい」と心配された。それでも諦めず、「ビニールハウスを使えば栽培ができるかもしれない」と同市安芸津町などのレモン農家を訪ねて勉強を重ねた。そして、自宅隣の田んぼを転作し、栽培用に整地して寒さに強い「リスボン」と、とげの少ない「ユーレカ」の2品種を選び2年生の苗木を植えた。
大きな課題は霜対策だった。霜が降りる前に覆うと暑さで木が弱ってしまうため、初霜を確認してからビニールハウスに切り替えるなど、試行錯誤を重ねてきた。毎日天気を確認し、気温の変化に合わせてわらを敷いたり、防寒ネットを掛けたりなど入念な管理を続け、寒冷地でも安定した収穫を目指している。

皮ごと食べられる
グリーンレモンは、完熟前の若いレモンで、イエローレモンよりも爽やかな香りが特徴。果汁はやや少なめだが、皮の香りが豊かでレモンサワーやレモン酒、レモンジャムなどにぴったりだ。

防腐剤やワックスを使用していないため、皮ごと安心して使えるのも魅力。仁井内さんは、「自分で育てたレモンを焼酎に絞って晩酌するのが、至福のひととき」と穏やかな笑顔を見せ、「今の時期だけ味わえる爽やかな香りのグリーンレモンを、ぜひ楽しんでほしい」と話している。

現在は、黒瀬町に加え安芸津町でも栽培を始め、22㌃に約150本を植樹。そのうち65本が今年から収穫を迎えている。「将来的には1000本まで増やしたい」と目を輝かせる。
文=山北直子、写真=井川良成
プレスネット編集部














