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【親子で読みたい】冬の風物詩『とんど』って何のため? つくりつなげる東広島の伝統

  • 2025/12/05
とんどに火をつけ見守る様子(2020年・西条町御園字)

 東広島には昔から大切に受け継がれてきた行事やものづくりがあります。冬の風物詩『とんど』もその一つです。竹でやぐらを組んで燃やすこの行事が、昔から今まで続いてきた理由を、広島大学で研究している「とんど博士(はかせ)」の横川知司(よこがわ・さとし)さんに聞きました。 (高藤)

※この記事は、親子で楽しめるようにやさしい言葉でまとめています。

年神様を見送る

 火の祭り「とんど」(安芸津、高屋町白市では「シンメイサン」と呼ぶ)。正月を一緒に過ごした年神様(としがみさま)を煙に乗せて見送り、「今年も元気に過ごせますように」「作物がよく実りますように」と願う行事として、全国各地で受け継がれています。
 東広島市内では1月中旬から2月中旬にかけて、地域の田んぼや小学校のグラウンドで行われます。

年神様とは?

 その年の幸せを司る神様です。正月に家々に迎えるためにしめ飾りを飾るなど、さまざまな風習や行事があります。

作って飾って

 とんどは、竹を切り出し、やぐらを組み立てて作ります。そして、完成したとんどに正月飾りや書きぞめを飾って燃やします。
 このとき、餅などの食べ物を一緒に焼いて食べます。火や煙には年神様の力が宿り、焼いた食べ物を食べることで、力を分けてもらえるとされています。
 最近では、地域の人が集まって食べたり飲んだりしながら交流する大切な場になっています。学校行事として行う小学校もあります。

餅を焼いている様子 (2025年・安芸津町風早)
餅を焼いている様子(2025年・安芸津町風早)

なぜ竹で作られるの?

 竹は冬でも葉が落ちず青いままなので、昔の人は「力のある特別な植物」と考えて七夕などいろいろな行事に使ってきました。燃えるときに「ドン」「ボン」と音が出ることも選ばれる理由です。

いろいろな名前

 名前の理由は、まだはっきり分かっていません。竹が燃えるときの「ドン、ドン」という音が由来という説や、昔の宮中行事「左義長」のかけ声が変化して「とんど」になったとする説もあります。

日本各地の呼び方

東北:ドントヤキ
関東:サイトヤキ・ドンドヤキ
北陸・新潟:サイノカミ
九州:ホゲンジョウ・オニビタキ
長野県松本市:サンクロウ

とんどの構造

シン
 一番上まで伸びている竹は「シン」と呼ばれ、恵方に倒れると良いことが起こると言われています。

タナ
 割った竹などで作る「タナ」。円盤型や四角型など地域によって数も形もさまざま。

あなたの地域はどんな形?

 形の違いには地域性があり、北部はタナのない〝素朴な形〟、南部では飾りの多い〝華やかな形〟が受け継がれています。諸説ありますが、安芸津や竹原で行われる「シンメイサン」という火祭りの形が伝わったためとも言われています。

とんど博士からみんなへ

 とんどは、地域のみんなで続けてきた大切な行事です。力を合わせて作る楽しさや、火のあたたかさ、飾りの工夫などを感じてほしい! みんなの参加が、とんどの伝統を守る力になります。

【とんど博士・横川さんプロフィール】
 横川知司さんは、広島大学で地域の伝統行事、とくに小正月の火祭りである「とんど」や「シンメイサン」を専門に研究する大学院生。2019年頃から東広島市全域で悉皆調査(しっかいちょうさ)を行い、とんどの形状分類、立地の違い、運営主体の変化などを詳細に記録している。これらの研究は学会でも発表され、地域文化を学術的に整理する取り組みとして高く評価。子どもたちや地域の人と一緒に、未来へ伝統を残す活動も行っている。

プレスネット編集部

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