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東広島 SDGs先進度調査で中四国1位 全国では702市区中、27位 日経調査

  • 2025/05/19

 東広島市は、日経が昨年8月~11月にかけて全国の市区を対象に調査した、SDGs(持続可能な開発目標)の先進度調査で、中四国の自治体で1位になった。全国ランキングでも27位に入った。市総務部経営戦略チームに話を聞きながら、東広島市が1位になった要因などを分析した。(日川)



SDGs先進度ランキング(中四国地区)

評価の理由

 国連が掲げる、SDGsは、持続可能なより良い世界を目指して、17のゴール(目標)を掲げ、2015年にスタートした。
 東広島市は、20年に、まちづくりの方向などをまとめた第五次総合計画を策定。「誰一人として取り残さない」という理念が、SDGsの掲げる思いと一致していることから、同年、内閣府の行う「SDGs未来都市」に応募。県内の自治体で初めて選ばれ、SDGsの取り組みを進めてきた。
 先進度調査は、前回の22年度以来。経済、社会、環境の3分野で各指標を数値化し、ランキング化した。東広島市は各分野で、それぞれ全国上位50位以内となり、総合得点で全国27位になった。
 東広島市のSDGs担当者の話をまとめてみると―。経済分野では、スタートアップ企業の支援や、企業版ふるさと納税の取り組みに積極的だったことが評価されたと分析する。スタートアップ企業の支援では、他の自治体にはない、未来のビジョンが集まる空間として開設した「東広島イノベーションラボミライノ+」をフル活用。大学と連携しながら、大学発のベンチャーや女性の起業を生みだしてきた。
 企業が寄付をすると法人関係の税が軽減される「企業版ふるさと納税」制度は、23年度、全国自治体6位となる5億6000万円の寄付金が集まった。企業が立地する環境などを生み出す、「T&G構想」などに寄付金を活用している。
 社会分野では、外国人市民の割合が県内トップの自治体であることから、外国人市民向けの行政サービスを強化したことが評価されたという。ホームページは多言語に対応し、特にベトナム語の広報は、市内外からのベトナム人のアクセスが増えているという。
 また、ダイバーシティ(多様性)を視野に、同性のカップルらを、お互いの人生のパートナーと定義する「パートナーシップ制度」の導入(2023年)や、自治体の持続可能性を背景に、人口が増え続けていることなどもプラスの大きな要因、とみる。
 環境分野では、リサイクルの取り組みで、使用済みペットボトルを再びペットボトルにリサイクルする「水平リサイクル」を、企業と連携し、23年に県内自治体で初めて事業化したことがポイントを高めた。
 二酸化炭素(CO 2)削減では、22年の「市ゼロカーボンシティ宣言」に則って事業を推進。道の駅湖畔の里福富では、再生可能エネルギーでの電力供給を始めた。



数字で見る東広島市のSDGs未来都市計画

企業(団体)の取り組み

 SDGsの目指す社会の実現に向けた第一歩として、東広島市が力を入れているのが、SDGsに積極的に取り組んでいる企業や団体を登録する「SDGsパートナー制度」だ。20年に創設、今年3月末現在で、438の企業(団体)が登録している。
 自動車工場のメンテナンス業などを担うメンテックワールド(八本松飯田)は、国籍や性別を問わないダイバーシティ経営などを実践する。広島信用金庫では、地域社会と手を携えることを使命に、事業承継支援など中小企業の課題解決支援に取り組む。教育現場の取り組みも進む。
 市では、登録パートナーを対象に、パートナー同士のマッチングを支援。目標や課題を共有し、課題解決に取り組む事業に補助金を交付する仕組みも設ける。SDGsの17番目の目標である「パートナーシップ」が、「企業の利益と社会課題の解決をセットでつくるSDGsの根本的な仕掛け」(経営戦略チーム)との思いからだ。
 同チームが把握するマッチング例は3件。その中の一つ、日興ホーム(西条町寺家)は、バッグなどを手掛ける、「工房こどもノか」に廃棄するブルーシートを提供。工房こどもノかは、廃材を使ってバッグを作り、アップサイクルに取り組んでいる。



記者の目

 SDGsが採択されてから10年が経過した。SDGsという言葉は、私たちの暮らしや教育の場で定着しているといってもいいだろう。
 特に幼児から大学生まで教育現場の取り組みは、生きた教材として子どもたちに自然な形で浸透している。大学生の間では、SDGsが就職の際の大きな判断基準になっているという。SDGsに取り組まない企業は、未来がない、と学生が敬遠しているのだ。
 一方で、私たち大人や企業の間では、理念が先行するのか、何をしていいのか分からない、という声を聞く。取り組みの成果が分かりづらいことが理由の一つ。解決には企業や市民の間で、取り組み例の見える化や、やれることをやるという意識付けをすることが大事だ。まずは誰でもできる、「てまえどり」から始めてはどうだろう。



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プレスネット編集部

広島県東広島市に密着した情報を発信するフリーペーパー「ザ・ウィークリープレスネット」の編集部。

東広島の行事やイベント、グルメなどジャンルを問わず取材し、週刊で情報を届ける。

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