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2024衆議院選挙を振り返る 保守の地盤が強い東広島市で寺田稔氏はなぜ敗れたのか?

  • 2024/11/14

4氏が覆面座談会
寺田氏サイドからみた衆院選広島4区

 10月27日に投開票された第50回衆院選。東広島市が選挙区に含まれる広島4区では、日本維新の会の比例代表中国ブロック前職の空本誠喜氏(60)がきん差で勝利。区割りの変更に伴って、小選挙区から比例に回った新谷正義氏(49)に代わり、小選挙区で立候補した自民党前職の寺田稔氏(66)が敗れる結果となった。寺田氏はなぜ敗れたのか―。政治に詳しい4氏が寺田氏のサイドからみた選挙戦を振り返った。(聞き手/ザ・プレス編集長 日川剛伸)



小選挙区で敗れ、支持者に頭を下げる寺田氏
小選挙区で敗れ、支持者に頭を下げる寺田氏

座談会出席者
A氏…現職東広島市議
B氏…現職東広島市議
C氏…東広島市元幹部職員
D氏…政治に精通する市民

寺田氏を支援する自民党東広島市議団の動きはどうでしたか。

A 東広島であった寺田氏の出陣式には、多くの市議が参加していた。ただ、これまで新谷氏を応援してきた議員の中には、寺田氏を支援することに、仕方なくというか気持ち的にふっきれない人もいたという印象だ。

B 各市議がどれだけの覚悟で、寺田氏を応援していたのかは分からない。市議の中には、国政に直接的な関係を持たない人もいるから。

県議の動きは。

D 4区では、4区内選出の9人の自民党県議が寺田氏を支援したが、県議会の会派で見ると、広志会が2人で最大会派の自民議連が7人という構図だった。今回の選挙戦では、呉市選出で広志会の城戸常太氏が責任者を務めたが、実は両会派は県議会では対立しており、城戸氏の指示に自民議連の県議が額面通り動いたとは思えない。寺田氏に回るべき半数以上の自民党の票が動かなかったとみるべきだろう。

市民の反応は。

C 市民からは、寺田氏を応援するために、地域に声を掛けてもらう依頼が来たりとか、支援の輪を広げるためのビラが届いたりといったことがなかったと聞く。企業や団体への支援依頼の動きもにぶかった。

A ある地区であった街頭演説会に行ったが、新谷氏が駆けつけているから参加した、という声を聞いた。「今回は投票する人がいないから残念」という声もあった。そういう人たちは、空本氏に一票を投じたのではないだろうか。

B そういう人たちは、一政党からは一人しか立候補できない小選挙区制度のことを分かっていないのではないか。

小選挙区で敗れ、支持者に頭を下げる寺田氏
小選挙区で敗れ、支持者に頭を下げる寺田氏

「政治とカネ」の問題は、寺田氏に影響を与えましたか。

B 寺田氏自身を巡る「政治とカネ」の疑惑に触れる市民はほとんどいなかった。批判されたのは、選挙戦のさなかに明るみに出た、自民党支部に2000万円を支給した問題だった。

D 動画配信サービスのユーチューブを見ると、過去のネガティブな寺田氏が出てくる。再生回数は、選挙戦の日を追うごとに増えていた。寺田氏自身の問題も間接的に影響があったのは確かだろう。

B 今回の選挙では、物価高対策が国民の大きな関心事だった。にもかかわらず、マスコミは、「政治とカネ」の問題ばかりをクローズアップした。そのことが果たして国民のためになったのだろうか。

D 国民民主党は、年収が103万円を超えると所得税が課税される、いわゆる「103万円の壁」の見直しを訴えて、大きく議席を増やした。訴えが国民の共感を集めた形になった。寺田氏は東広島発展プランを打ち出して選挙戦に臨んだが、市民に届いたとは思えなかった。

C 選挙戦の終盤では、寺田氏は政策を訴えようにも、2000万円のことを防御することでいっぱいいっぱいだった。政策が届かなかった要因の一つになった。

A SNSなどをうまく使って、若い世代にきちんとメッセージを届けていた国民民主党と対照的だった。

B 寺田氏の思いが伝わらなかったのは、努力不足。選挙事務所を含めて組織ができていなかった。東広島事務所のスタッフは、選挙を戦ったことのない人が多く、さまざまな段取りが後手後手に回っていた、と聞く。
 もう一つ、区割りの変更が発表されて以後、東広島市では、新谷氏との関係からか、寺田氏がイベントなどにほとんど呼ばれなかったのは事実だ。

D 寺田氏を知ってほしい後援会の気持ちとはうらはらに、本人は会合に誘われても「結構です」とつれない。各組織のトップには伺うが、その全体には積極的にアプローチしない。「本気で東広島で票を取る気があるのか!?」と選挙期間中、怒り出す後援者もいた。

当選し喜ぶ空本氏
当選し喜ぶ空本氏

今回、保守の強い東広島で寺田氏が敗れた事実をどうとらえますか。

B 結果から見ると、東広島市は、そこまで保守が強いとはいえないのではないか。先ほどのA氏の指摘のように、保守の思想よりも、個人を応援する思いが強くでるまちだと思う。今回の結果でも分かるが、風が吹けばなびくような保守ともいえる。

D それでも東広島市は保守のまち。このまちが健全に成長したのは保守の力。組合の強い企業城下町の三原市とは天国と地獄くらいの違いがある。

C 一つ言えるのは、東広島市のまちのことを考えると、寺田氏は小選挙区で勝っておくべきだったということ。東広島市の企業関係者に聞くと、政権が変わって政策が変わることを心配している。

A 東広島市のことを考えると、安定した政権のほうが良い。

B 安定的に回転させていくのが政権運営の本質。野党が議席を伸ばしたが、長く循環させていかないとまったく意味がない。

C 自民党が2回連続で負けるイメージがない。次の国政選挙は捲土重来を期して臨むだろう。

D 4区、市町の得票差には驚いた。地盤の呉・竹原での空本氏との票差は、寺田氏の不人気が原因だろう。県議の対立、なぜ調整しないのか。新谷氏との協力、話し合いをなぜやらなかったのか?東広島で個人演説を1度もしない寺田氏。有権者はよく見ている。

データで見る 寺田氏を支援する自民党広島県議の動き

2024衆院選
4区(小選挙区)の市町別得票と投票率
自民党公認候補の東広島での得票比較
比例中国ブロック(東広島市)の政党別得票
記者の画像

プレスネット編集部

広島県東広島市に密着した情報を発信するフリーペーパー「ザ・ウィークリープレスネット」の編集部。

東広島の行事やイベント、グルメなどジャンルを問わず取材し、週刊で情報を届ける。

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