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(THU)

【対談】岡田裕介 × 花本マサミ:中四国最大級のシネコン「広島バルト11」開館。音楽やスポーツにも対応できるスタイルに

  • 2020/11/28
岡田裕介社長

岡田裕介社長(2004年3月)


ティ・ジョイ(東映)と東宝による中四国最大級のシネマコンプレックス「広島バルト11」が広島市安芸郡府中町の「ダイヤモンドシティ・ソレイユ」内に3月24日、グランドオープンする。ティ・ジョイと東映の岡田裕介社長が来広した。

(CIINEMA NEWS:2004年3月発行号より)

中四国最大級のシネコン「広島バルト11」
音楽やスポーツにも対応できるスタイルに

 

初めは馬鹿だなんて言われた(笑)
でもデジタルも受け入れられてきた

 

花本:どうもお久しぶりです。この前お会いしたのは2000年12月のT・ジョイ東広島のオープンのときでしたね。僕は岡田社長にお会いしたらまずお祝いを言いたかった。「半落ち」が大ヒットいたしましたね。

岡田:おかげさまで。正直言いましてここまで多くの方に見ていただけるとは思っていなかったんです(笑)。人間を描いたものや感動するものを描いていけば日本映画はまだやっていけるという大きな自信にもなりました。

花本:日本映画はアニメ映画だけだと言われた時代がありましたが、今回は大拍手です。これからもこういう映画を見せていただきたい。

岡田:ありがとうございます。


花本:大変な事業を広島のダイヤモンドシティの中でされますね。11スクリーンのシネコン「広島バルト11」です。

岡田:中国地方最大級の映画館です。広島は大阪以西ではナンバーワンの都市ですよね。それにふさわしいシネコンをという思いはありました。われわれはT・ジョイ東広島から始まりましてそこから全国にオープンさせていただいて、今また広島に舞い戻ってきたという感覚です。


花本:そうですね。東広島はT・ジョイの一号館ですね。岡田社長といえば、以前からデジタル配信という画期的な方法を考えられていました。バルト11でも2つのスクリーンで楽しめますね。以前T・ジョイ東広島でデジタル上映を見られたある監督さんに「どうですか?」と聞いたら「フィルム派なんだけどデジタルはいいなあ」と言っておられました(笑)。

岡田:始めたときは馬鹿だなんて言われたりもしましたが(笑)。テレビもデジタルの時代になってきたこともあって、みなさんの中で少しは受け入れられてきたのかなという気はしますね。

花本:映画人というのは頑固ですからね(笑)。


岡田:規律を守るというのがいいところでもありますけれどもね(笑)。


天神川駅完成で遠方からの集客も。
広島東映もライバルですね(笑)

 

岡田裕介社長
花本:ダイヤモンドシティ・ソレイユには近くにJRの駅もできますね。

岡田:天神川駅を作っていただきました。広島というのは八丁堀周辺でもJRや電車に乗って映画館に行くという習性があまりない町ですよね。でも駅ができることによって電車を使って東からも西からも来ていただける劇場に来ていただける劇場になると思います。


花本:そうなると広島市中心部の映画館は生き残れるのかという恐れもありますが。八丁堀の広島東映の劇場もライバルになりますね。


岡田:そうですね。お互い同じ東映の一族でありながらもライバルです(笑)。僕はいい意味での競争は生まれていいものだと思っています。広島東映としても頑張っていかなければならないわけです。


花本:日本には映画ファンが多くてTVやビデオなどでもたくさんの人が見ているんですよね。しかしなぜ映画人口が減ってきているのか。本当はみんなスクリーンで楽しみたいんですよね。しかし映画館が地方都市にはなくなってしまった。そういう意味でもショッピングセンター内にあるバルト11が出来ることで「買い物ついでに観よう」という良い動機付けになるのではないかと思います。


岡田:これは東広島でやらせていただいたころから思っています。映画を観るライフスタイルが最近変わってきています。東広島は30年も映画館がないところだったんですね。だけどT・ジョイ東広島が出来て今まで映画を観られなかった人たちも観られるようにな
った。今度は今まで観ていた人がバルト11に行って、よりよい設備や環境の中で楽しんでいただける。そして観に行く回数も増えて、それによって映画人口も増えていくというようになると思うんですよね。


シネコンの新しいスタイルを提案
10年の間にはコンサートやスポーツなども


岡田裕介社長
花本
:僕はいつも言っているのですが「TVやビデオで見る映画は予習と復習で、本番はスクリーンだ」と。そういった意味でも「バルト11」は11スクリーンも持っていて東京で上映している映画がほとんど観られるようになりますね。


岡田:音に関してもアカデミー賞ノミネート作の上映劇場であるアメリカのアカデミーシアターのスパイスを活かした音響設備を整えさせていただいていますし、少しずつ進歩しているT・ジョイのタイプを見ていただきたいです。


花本:「バルト11」というネーミングについては….


岡田:「ソレイユ」というのがフランス..語で「太陽」という意味で、「バルト」っていうのはドイツ語で「森」という意味なんですね。太陽のなかのオアシス、憩いの場というイメージで、館内も森のイメージで作っています。


花本:これからも方々にシネコンを展開されるんでしょうけど、このような形で日本の会社がやってくださるのは日本人としても映画ファンとしても拍手です。


岡田:自分のとこるの映画だけではなく、すべての「映画」という観点から、好きな映画をご覧いただけるシネコンのスタイルを我々も新しい形で提案していきたい。そしてこれから10年の間には、必ずしも映画だけではなく、コンサート・スポーツなども含めたものを上映していくという役割を持っていかなければならないと考えています。


「海猫」「北の零年」を撮影中
日本映画のために頑張りたい


花本:夢が広がっていきますね。それとぜひ「半落ち」に勝るとも劣らない作品をどんどん作っていってほしいですね。森田芳光監督の「海猫」はもう撮影に入っているんですよね。


岡田:はい。あと行定勲監督で吉永小百合さん、渡辺謙さん、豊川悦司さん出演の「北の零年」。この2本をいま作っていますね。


花本:岡田社長のカラーが出ていますね。


岡田:いえいえ(笑)。「半落ち」をヒットさせていただき、自信を持って日本映画のために今後とも微力ながら頑張っていきたいと思っています。応援してください。

 

■ PROFILE:岡田 裕介(おかだ ゆうすけ)
1949年、京都府生まれ。慶応大学在学中の1970年、東宝映画「赤頭巾ちゃん気をつけて」で俳優として映画デビュー。1974年、ATG映画「明城(とっかん)」を初プロデュース。以後フリープロデューサーとして、映画「動乱」「空海」「天国の駅」などを製作。1988年東映株式会社入社。2000年、シネマコンプレックス企画・運営会社株式会社ティ・ジョイを設立、代表取締役社長に就任。2002年、東映株式会社代表取締役社長に就任。

■ 広島バルト11
東映のシネコン会社ティ・ジョイと東宝が共同で開業するシネマコンプレックス「広島バルト11」が3月24日、広島市安芸郡府中町に建設中のショッピングセンター「ダイヤモンドシティ・ソレイユ」内にグランドオープンする(3月19日営業開始)。劇場は2つのデジタル上映シアターを含む99席から406席までの大小11スクリーンを構え、座席数は1980となり中四国最大級となる。「映画を鑑賞する環境」を最優先課題として設計された同館。3つのシアターには席幅が広く専用テーブルが付いたハイグレードシート席も設置した。広島市内の映画館としては初めてのデジタルシアターでは、アカデミー賞ノミネート作品の上映シアター・通称アカデミーシアターに採用されている音響デジタルシステムを搭載。衛星配信で、コンサート・舞台・スポーツなどの映像も流す。会員には6回観ることに1回の鑑賞が無料になるサービスを実施する。

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