東広島市西条町西条東の仏壇販売店「蓮池うるし工芸」の社長で、伝統工芸士の蓮池稔さん(61)が仕上げた「16号堆漆(ついしつ)黒柿孔雀杢(くじゃくもく)造り」の仏壇が「第25回全国伝統的工芸品仏壇仏具展」で全国初の3期連続「経済産業大臣賞」(全国最高位)を受賞した。(山北)
「伝統技術を後世に伝えたい」
同展は、3年に一回開催。全国の伝統工芸士が制作した仏壇仏具の技術を評価する全国大会。
蓮池さんが同展に出品した仏壇は「先人が考えた多くの漆の技術の中で、最高の技術を勉強して手間暇を掛け、心を込めて作った」というが、大きなプレッシャーと苦労があったという。
この道40年の蓮池さんは、伝統的工芸品である「広島仏壇」の七つの生産工程で、漆を塗り金箔(きんぱく)を押す「塗師(ぬし)」。県で伝統工芸士は8人で、塗師は3人しかいないといい、「伝統工芸士は、あと20年先にはいなくなるのでは」と危惧する。次世代を担う子どもたちに、長い歴史の中で培われた漆や金箔などの技術の素晴らしさや、手作りの良さなどを伝承したいと、約20年前から小学校や大学などに出向き、出前授業などに力を入れている。
現在、仏壇の主流は、化学塗料を使用した大量生産の海外製。安価だが耐久性が低いことが多いという。一方、国産で漆を塗り重ねた手作りの仏壇は、耐久性があり使う人のことを思って作るので、作り手の心の温もりがあると説明。「作る人の思いを知ると、物や人を大切にすることにもつながる」と力を込める。
蓮池さんの妻は「夫は信念をもち仕事をしている」と笑顔。「妻はいつも背中を押してくれるので、仕事を頑張ることができる」と蓮池さん。
蓮池さんは「日本の素晴らしい伝統技術は、伝える人がいなくなったらすぐに消えてしまう。これからも、多くの人に伝統技術を伝えていきたい」と目を輝かせる。