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流通経路多様化で取扱量伸び悩み 岐路に立つ東広島流通センター 厳しい運営続く

  • 2022/02/21

東広島流通センターで行われる競り(撮影・日川)
東広島流通センターで行われる競り(撮影・日川)

 「東広島流通センター」をご存知だろうか。東広島市八本松東の国道486号沿いにある、東広島市と民間が出資する第三セクターの地方卸売市場だ。その東広島流通センターが今、大きな岐路に立たされている、という。(日川)

 

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 東広島流通センター(以下センターで表記)は、1982年、市民生活に欠かせない野菜や果物の青果物を安定的に供給する卸売市場として開場した。青果物の取り引きなどを行う3100平方mの卸売場棟と、飲食店などが入居する900平方mの関連店舗棟がある。

 

 表は、2016年からの売り上げと収支だ。第三セクターの利点を生かし、数字的には黒字を計上しているが、市が市有地の賃借料を免除し、固定資産税などの課税分も市が同額を助成した上での収益。つまり、市からの助成(支援)がなければ黒字化は困難で赤字運営が続いている状態だ。

 

 なぜ、赤字の状態が続くのか。一つは、センターの収入は施設使用者(テナント)の賃料収入に限定されているからだ。賃料収入が伸び悩めば赤字は解消されないという構造だ。センターには、現在、卸売業者、仲卸業者が各1者、関連店舗には9者が入居し、関連店舗の2区画が空いている状態だ。

 

 もう一つは、市場を経由しない本社直轄で独自の仕入れルートを持つ大型スーパーの台頭だ。このため、青果物の取扱量・金額は、1997年の8805t、18億5149万円をピークに減少傾向が続く。202 1年は4840t、11億6258万円だった。JAの産直市の開設などで生産者の出荷先の選択肢が増えたことも、センターの取扱量に影響を与える。市場で青果物を購入する買受人も市場開設時の174人から、現在は37人まで減少している。

 

 こうした中、センターの米田国明市場長は、昨年、改正卸売市場法が施行されたことを、黒字化に向けた転換点に挙げる。これまでセンターへの入居は、卸売業者や飲食店業者など限定的だったが、改正で反社会的勢力を除く、どんな業種でも入居できるようになった。米田市場長は「法改正を、突破口の一つにしたい」と意気込む。

 

 取扱量を増やすことも大きなポイントだ。市農林水産課の神笠秀治課長は、「例えば、生産者に身近な出荷先として選んでもらうよう、市場内に選果場を設け、生産者の出荷調整作業の負担軽減を図るなど、市場の機能強化を図りたい。取扱量を増やし、業者の収入がアップすればテナント料を上げることもできる」と青写真を描く。

 

 株主の一人で卸売業者の東広島青果・田中宏政社長は、地産地消の推進を担うセンターの使命に触れながら、「独自に販路を持たない地元農家を育成していくためにも、地元農家の生産量を確保したい」と意欲を見せる。

 

 一方、米田市場長は、センターを訪れる市民はほとんどいない現状に触れ、「一般市民が気軽に立ち寄れる、にぎわいのあるセンターにすることも、市場の活性化を図っていく方策の一つ」と力を込める。

 

 センターは、老朽化が進み、5年先には耐用年数を超える。こうしたことを踏まえ、市では生産者や学識者、流通関係事業者たちで検討会を設け、今春をめどにセンターの在り方について方向を出すことにしている。

 

 市議会でも、市民経済委員会でセンターの調査研究を行っている。全国で見れば、卸売市場数の減少に歯止めがかからない中で、黒字化に向け、どのような打開策を見いだすのだろうか。

●卸売業者と仲卸業者

 卸売業者は、生産者や出荷業者(団体)から商品を仕入れて、卸売市場内の仲卸業者や小売業者などに卸すのが主な仕事。一方、仲卸業者は卸売業者から商品を仕入れ、購入を希望している卸売市場外の小売業者や飲食店に卸すのが主な仕事。 平たく説明すると、卸売市場に商品を流通させるのが卸売業者で、卸売市場外に商品を流通させるのが仲卸業者。

●第三セクター

 自治体と民間企業の共同出資で設立された事業体。市の政策を事業に反映しやすいメリットの半面、独自性のある事業運営ができにくいデメリットもある。

●県内の他の卸売市場は

 県内には公設2市場、第三セクター2市場、民設の5市場がある。このうち、公設の広島中央卸売市場は、広島中央卸売市場東部市場との統合による再整備事業を進めている。再整備には国庫補助と、市からの繰入金を想定する。開場40周年を迎えた呉地方卸売市場は、今年度から再整備に向けた検討を始めた。運営は指定管理者制度を導入する意向。

 開設50年の福山地方卸売市場は民設民営。今年度から再整備に着手している。法改正を生かし市場内に福山通運の誘致に成功、大幅な賃料収入アップを図っていく。

 

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