東広島市志和町の「安芸の山里農園はなあふ」(森昭暢代表)は、農林水産省の令和3年度「未来につながる持続可能な農業推進コンクール」の有機農業・環境保全型農業部門で持続可能な農業の確立を目指し、意欲的に経営や技術の改善などに取り組んでいる農業者などに贈られる「農産局長賞」を受賞した。(山北)
森昭暢さん(42)は名古屋大学大学院を卒業後、東京で屋上菜園の設計や施工、管理の仕事をしながら休日には、新潟県に行き稲作などの農業体験を行ってきた。その取り組みの中で、食べ物や将来の暮らし、自然環境への不安が膨らみ、地域資源や自然の仕組みを最大限に生かした地球環境にやさしい持続可能な農業を目指そうと決意。会社を退職後、野菜の栽培技術など自然農法や水稲栽培について学び、2011年に東広島市志和町に移住し「はなあふ」農園を開設した。
「はなあふ」は、日本の四季や暮らし方、生き方を大切にし「つくり手・つなぎ手」として山里の旬を届ける農園にしようと、春・夏・秋・冬の頭文字を取って名付けたという。
森さんは、母の裕子さん(66)らスタッフと農地の生態系を保ちながら「健康を支える食と暮らし」を目指し、約2.7㌶の農地で年間約40品目の野菜や果物、稲を育てている。露地を中心に少量多品目の作付けで、農薬や化学肥料を一切使用しない有機・自然農法で栽培している。採れた野菜は安心・安全をうたい、消費者にも好評でリピーターも多いという。
森さんの元気の源は家族と野菜。11年間を振り返り「農業にはいろいろな可能性があるので、楽しいしやりがいがある。今まで多くの人の支援を受けて続けられた。恩返しのためにも地域への還元や、農業体験のイベントなどを通して農業の担い手を育てたい。目標は多くの人とつながり、新しい価値を生み出し、時代に合った農業展開」と目を輝かす。
森さんの持続可能な農業の取り組み
森さんは、人と生態系が調和する持続可能な農業を目指している。畑の雑草などを堆肥化したり、土壌診断や生物多様性調査などを行ったりしながら土づくりに取り組み、必要最小限の有機質肥料で栽培している。作物は健康な土壌に伸び伸びと根を張ることで健康に育つという。その取り組みを紹介します。
【土づくりのベースは草生栽培(リビングマルチ)】
土壌を草で覆うことで土壌の温度が高くなるのを防ぎ、水分を保てるので乾燥に強い。栽培では、雑草(緑肥作物)を最大限生かすために、作物を優先させる「畝」と、雑草を優先させる「通路」部分を区分けし、それぞれ1mずつ交互に設ける。次作は、「畝」と「通路」を入れ替えることで、雑草による土づくりが可能となる。
【在来種のナスの生産】
JAや東広島市と連携し、在来種のナスの生産に取り組んでいる。2021年に「東広島青なす」と命名された。
【リサイクルバイオディーゼル燃料の利用】
トラクターの燃料は、地域の飲食店などの天ぷら油(廃食油)を回収し、ろ過精製してバイオディーゼル燃料として利用している。
【紙マルチ】
原料に紙を利用したマルチング用シートを畝に敷いている。環境にやさしい素材で使用後は自然分解し土にかえる。
【旬の野菜】
インターネットや道の駅湖畔の里福富、とれたて元気市となりの農家店、「はなあふ」の直売所の自動販売機(同市同町志和西1448)などで販売している。野菜本来の味や香りがして栄養価が高い。