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(SUN)

部活動の「地域移行」 モデル校志和中の取り組みをみる 住民指導「地域が応援する部に成長」

  • 2024/06/03

 子どもたちが中学校生活で楽しみにしていることの一つが部活動だろう。その部活動が、大きく変わろうとしている。文科省が公立中学校の休日の部活動を、学校から切り離してスポーツ団体などに運営を委ねる「地域移行」の方針を示しているからだ。東広島市の先行事例と他市町の取り組みを取材した。(日川)


町内に2カ所のゴルフ場がある地の利を背景に誕生した志和中のゴルフ部。写真は部員を指導する志和体育振興会会長の黒川信生さん(左)
町内に2カ所のゴルフ場がある地の利を背景に誕生した志和中のゴルフ部。写真は部員を指導する志和体育振興会会長の黒川信生さん(左)


 東広島市では、昨年4月から、志和中(東広島市志和町志和西)を「モデル校」にしてスタートさせた。地域移行の前段階として、部活の運営主体は学校に残したまま、地域住民に指導を委ねる「地域連携」の形で取り組む。文科省が地域移行とは別に、外部人材など地域とのパイプを生かした施策も模索しているからだ。

 志和中では、地域が学校運営に協力するコミュニティー・スクールの仕組みを生かし、同スクールが指導者を確保する受け皿となった。現在、13人の住民が指導者となり、競技の経験を生かしながら、各部活動で生徒を教えている。部活によっては休日のほか、平日も指導する人がいる。

 地域連携は新たな部の誕生や、部活動の新たな試みに結び付いた。町内に2カ所のゴルフ場がある地の利を背景にゴルフ部が生まれた。地域の多彩な人材を活用し、生徒にさまざまなスポーツや文化活動を体験してほしい、と冬季限定で楽しめる神楽部や、サッカー部(フットサル)など体験型の部活も誕生した。小規模校ゆえ、部活の選択肢が限られるデメリットも補っている。

 ゴルフ部には1~3年生の男女18人が在籍。2年の中西月乃さんは「小2からゴルフを続けていたので、部活があって良かった」とほほ笑む。ゴルフ部を指導する志和体育振興会会長の黒川信生さんは「ゴルフを楽しむこととマナーの徹底を念頭に、子どもたちを教えている。子どもの成長を見るのは本当に楽しみ」と目を細める。

 地域移行は、教員の部活への負担を軽減することも目的の一つ。今年3月まで志和中の校長を務めた脇坂治海さんは「一つの部活を、顧問の先生と外部指導者の2人で見ることができ、先生の負担は減っている。専門的な知識を持った地域の人の指導は、生徒に刺激を与えている」と話す。

 何より、地域住民が部活に関わることで、「地域に応援される部活になってきている」(脇坂さん)という。

 東広島市では今年度から地域展開の新たなモデル事業として、西条と黒瀬地区の5校で、広島大学教育学部、大学院人間社会科学研究科と広島国際大学健康スポーツ学部の競技経験を持つ学生を派遣してもらい、土日に技術指導を行う。また、土日に練習をしている部活を対象に、3競技団体が指導者を派遣することや、部活動指導員を増やすことも計画している。


練習に取り組む志和中女子バレーボール部員。専門的な知識を持った地域の人の指導は部員に刺激を与える
練習に取り組む志和中女子バレーボール部員。専門的な知識を持った地域の人の指導は部員に刺激を与える


県内他市町の取り組みは?

 県内では今年3月末までに広島市、福山市、安芸高田市、府中市、三原市、海田町、三次市の7つの自治体が地域移行に向けた実証事業に取り組んでいる。※三次市は23年度末までにモデル地域を指定、24年度から取り組む。

 海田町は、2中学の陸上部希望者が、町文化スポーツ協会の「織田幹雄スポーツクラブ」に参加し活動している。陸上の公認資格を持った人が指導に当たっており、生徒からは「専門的な指導が受けられる」と好評、という。

 三原市は、少子化で部員が少なかったり、部活がなかったりするサッカーや、女子ソフトボールなど5競技について、スポーツセンターや競技団体などが学外クラブをつくり活動する。参加している生徒は「やりたかったスポーツができる」と生き生きとしている。

 一方で、東広島市のように、外部指導者や、学校の職員として採用される部活動指導員を活用した地域連携は、14市町で取り組んでいる。

 部活の地域移行は、教員の働き方改革などを背景に、国が2023年度から25年度までの3年間を移行に向けた改革推進期間と位置づけ、可能な限り、早期の実現を促している。

 ただ、部活の地域移行には、まだまだ課題も多い。海田町では、今年度から陸上以外の競技についても、地域移行をもくろむが、「指導者など受け皿の確保が難しい」といった声が上がる。参加費など保護者の負担が増えることを懸念する声も強い。一方で、地域連携に取り組む自治体では、部活は教育的意義が大きいことなどを理由に、部活を学校から切り離すことに、慎重な姿勢を見せる。

 こうした中、東広島市教委では、モデル事業に取り組みながらも、有識者らで作る検討会議の意見などを踏まえ、「地域移行か地域連携かの方向を見出していきたい」としている。



部活の地域移行Q&A 市教委指導課に聞く 気になるここが知りたい

Q.地域移行になったとき、学校の部活はなくなりますか。

A.スポーツ庁、文化庁(国)から出されているガイドラインでは、休日における学校部活動の地域連携や地域移行について、令和5年から令和7年までの3年間を改革推進期間と定め、段階的な地域連携や地域移行を進めていくことになっています。
平日における環境整備については、できることから取り組むことになっているため、今後、部活動がなくなるかどうか、国も明らかにしていません。

Q.保護者の負担は部活の時と比べて増えますか(送迎や会費など)。

A.これまで学校で行っていた部活動が、地域に移行することになると、保護者にとっては、活動場所への移動や、会費の負担などが考えられます。

Q.地域移行になったら、学校対抗の試合はなくなりますか。

A.現段階では、中学校体育連盟(中体連)の主催する大会が、今後どのようになるか示されていないため不明です。

Q.地域移行になっても、学校の先生は指導できますか。

A.教員が地域クラブなどで指導することが可能となるよう、仕組みを整備しているところです。

Q.現在の部活は任意加入です。地域移行になっても任意加入ですか。

A.地域移行になっても加入は任意です。

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プレスネット編集部

広島県東広島市に密着した情報を発信するフリーペーパー「ザ・ウィークリープレスネット」の編集部。

東広島の行事やイベント、グルメなどジャンルを問わず取材し、週刊で情報を届ける。

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