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東広島市内12校にSSR(スペシャルサポートルーム) 居場所、多様な選択肢

  • 2022/12/06

 全国で不登校の子どもたちが増えている。東広島市も例外ではない。東広島市で年間30日以上欠席した不登校の小中学生は2021年度、307人で過去最多を記録した。なぜ、不登校が増えているのか。フォロー体制はどうなっているのか―。不登校を巡る現状を追った。(日川剛伸)

目次

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増加の一途たどる不登校の児童生徒

 東広島市教委の調査によると、市内の市立小中学校の不登校の児童生徒は、新型コロナウイルス禍前の2019年は207人だったのに対し、コロナ禍の21年度は307人と1・5倍に増えている。ただ、不登校の児童生徒は、コロナ禍前から増加が続き、文科省の調べでは県内の不登校の児童生徒は10年連続で増えている。

不登校の生徒

 東広島市教委の話によると、不登校が増えた背景の一つにあるのが17年に施行された教育機会確保法、という。学校へ行きづらくなった児童生徒の休養の必要性や、学校以外での学びの重要性を記し、保護者たちの間で「無理に学校に行かせなくてもいいという意識が広がった」と分析。さらに休校や学級閉鎖が続いたコロナ禍で、欠席することへの抵抗感が薄れ、不登校の増加につながっている、という。

県教育センター内に学びの場

 こうした中、教育機会確保法にも明記されているように、民間のフリースクールで指導を受けたり、校内に別の居場所を設けたり、と不登校の児童生徒のために多様な選択肢を用意する動きが広がっている。

多目的ルーム
県教育センターに設けられたSCHOOL“S”の多目的ルーム。円卓テーブルを置くなど、およそ教室らしくない部屋で、子どもたちはそれぞれの目的に応じた学習の時間を過ごせる。

 県教委では19年度から、集団での学びになじみにくい子どもたちのために、「校内フリースクール」といえる、スペシャルサポートルーム(SSR)と呼ばれる部屋を県内の小中学校の一部につくった。

 呼応して市教委もSSRを設置し、現在、市内には、県・市教委合わせて、大規模校を中心に小学校5校、中学校7校にを設けている。一方で市教委では、民間のフリースクール2校と提携し、フリースクールに通う子どもたちを出席扱いにしている。さらに、県教委では今年4月、八本松町の県教育センター内に、不登校の小中学生の多様な学びの場となる「SCHOOL“S”」を開設した。来室とオンラインを併用し、それぞれの児童生徒が自分で時間割を作成している。

オンラインによる利用も可能
オンラインによる利用も可能。子どもたちは自宅などから学習アプリなどを活用して学べる。

 SCHOOL“S”には10月末現在、138人の児童生徒が登録し、一日平均で約40人が利用。県教委不登校支援センター長の蓮浦顕達さんは「不登校になる理由は、それぞれで違う。一人一人の置かれた状況を確認しながら、その子に合ったアプローチで支援を行うことが重要」と語る。その上で、「忘れてはならないのは、子どもたちが社会とのつながりをどう紡いでいくのか。相談する力や、強みを知って生かす力を身に付けてもらうよう心掛けている」と強調する。

親がすること。まずは期限を決めて様子を見る

心療内科医で学習塾を運営、不登校に詳しい長井敏弘医師の話

 私が不登校の子どもを診察した見立てなどから、不登校になる子どもの9割は、社交不安障害が原因。30人以上の教室など大人数がいる場所では、周囲の視線が気になって緊張し、自分のことがうまく伝えられなくなる症状で、たくさんの子どもが集まる学校に行くのを嫌がるようになってくる。いじめが原因でなるのは1割以下で、昔のようなやんちゃな子が不登校になるケースはほとんどない。

 脳内には危険を感受する扁桃(へんとう)体と呼ばれる部位があり、発達の未熟な小中学生の段階で叱責(しっせき)などの刺激を受けると、この危険センサーが過敏に反応するようになり、大人数のいる場所で不安が強くなる。これが社交不安障害で、親が「ああしろ、こうしろ」「それはやってはダメ」と支配的になる家庭で、社交不安障害になる子どもが多い。

 親が、不登校になった子どもに、まずすべきことは、数カ月など期限を決めて様子を見ること。「学校に行かなかったら進級できないよ」などと体裁をつくろう言葉を子どもに投げかけることは禁句。子どもにしてみれば、「自分のことは思ってくれていない」とますます心を閉ざすようになる。

 不登校の子どもは、親に言えないから悩んでいる。だから、親が説得して子どもの不登校が改善されるケースは稀で、期限を過ぎても、子どもに変化が見られないときは、第三者に相談すること。子どもの友人でもいいし、学校以外の習い事をしている先生でもいい。第三者には、気持ちが落ち着くのか、心を開くことが多く、そこから学校に登校するヒントも見えてくる。

 大切なのは、不登校になっても、家庭で引きこもりの状態を長く作らないこと。サポート校でも、習い事の塾でも何でもいい。人との関わりが持てる、学校以外の「第三の居場所」を探してあげること。学びの場とともに、社会に出て必要不可欠な人と関わっていくことの訓練の場になる。

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