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次期衆院選で自民 新広島4区擁立報道に苦言<東広島市の現職市議とプレスネット編集委員が緊急座談会> 

  • 2023/02/09

 改正公選法の施行に伴う次の衆院選の新たな区割りで、自民党が新広島4区の候補者に、5区を地盤とする寺田稔前総務相を擁立する方向で最終調整に入ったとの記事が、2月1日付の中国新聞に掲載された。報道を巡っては、市民らから「寝耳に水」という声が多く寄せられた。そこで今回の記事の真偽や、統一地方選を前にした選挙報道の在り方などについて、元代議士秘書で中選挙区から小選挙区への移行の際の事情に詳しい、東広島市議の奥谷求氏と、本紙編集委員の吉田実篤が意見をぶつけ合った。(進行はプレスネット編集委員・日川剛伸)

ザ・ウイークリー・プレスネット
2023年2月9日号掲載

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地元政治家も「寝耳に水」
密室での決め方に違和感

―今回の報道についての率直な思いは。

奥谷 まさに「青天の霹靂」。1994年に、私がかかわった中選挙区から小選挙区に移行する際には、当時の森喜朗自民党幹事長が、区割りの当事者だった中川秀直氏、谷川和穂氏(故人)、池田行彦氏(故人)から話を聞き、それぞれが納得した上での記者発表になった。今回のように政局がらみで先行報道されたのは初めてのケースで驚いている。

吉田 県内最大の焦点区の新4区では、現4区現職の新谷正義氏よりも、池田行彦氏を引き継いだ現5区現職の寺田稔氏が、実績からみても新4区の候補者としてふさわしいのでは、という話は、以前からあった。しかし、後援会問題、金銭面での不祥事に加え、寺田氏の「私は一切関係ない。後援会は全員応援してくれている」などの対応に、有権者や支援者、4月に選挙を迎える県議、市議からも「簡単には決められない」という論調が大勢だった。それが、今回の報道で一気にぶっ飛んだという思いだ。確認をしたが、当事者の新谷氏はもちろん、茂木敏充党幹事長や自民党の森山裕選挙対策委員長らも知らないような情報を、一方に不利になるように意図的に報道するのはフェアとはいえない。マスコミは、密室で政治を決めるのは良くないと伝えながら、今回のように、手前ごととなると、密室で決まったことを平然と書くことに違和感を覚える。

奥谷 本来、区割りについては、当事者の代議士が、支援者らに思いを伝え、後援会の判断をあおぎながら決めていくのが正しいやり方。だから、今回のような密室での決め方は、当事者の政治家には失礼な話だ。

吉田氏「誰のための政治なのか」
奥谷氏「新4区のしこりを危惧」」

―市民(有権者)や新谷氏サイドからの反応は。

吉田 2017年の衆院選で、新谷氏が比例区から選挙区に回って出馬したのは、岸田文雄首相の意向があったから。新谷氏の支援者からは、今回、岸田首相の意向も背景に寺田氏の新4区への擁立が決まったのなら、岸田首相は新谷氏に一言あってしかるべき、という思いが強い。

 もう一つ、これまで新谷氏を応援してきた人たちからは、「誰のための政治なのか」と。今回の報道には、歯がゆいという声を多く聞いた。

奥谷 (報道後に)市民からは、経緯について問い合わせが相次いだが、「分からない」としか答えられなかった。市民は、私たち市議や県議に必ず国政のことを聞く。それだけ国政には関心を持っている。候補者の擁立には、国政があって県政や市政があることや、支援者・市民への配慮もきちんと考えてもらいたい。

吉田 県議や市議は、それぞれの選挙区で当選した国会議員とともに政治活動を行う。選挙区では、その国会議員が一番の存在だからだ。県議や市議にとっては、選挙区の国会議員の擁立に関することは軽々しいものではない。今回の報道には、寺田氏が所属する宏池会と近い一部県議が情報を新聞社にリークして、決定権を持つ幹事長に確認無きままの観測気球的記事。言語道断だ。

―最後に思いの丈を一言で。

奥谷 危惧しているのは、新4区の自民党支部長の人選。今回の報道に端を発して、自民党が一つにまとまらなければ、しこりが残ることになる。中選挙区から小選挙区に移行したとき、自民党を一つにまとめるのは並大抵のことではなかった。新4区の自民党支援者や、保守系市民らが一枚岩になって、「この人を支援しよう」という気持ちにならないと、党全体にとっても損失になる。

吉田 新4区は焦点区。最終調整も、代議士当事者の了解もないまま、密室で決められていることは極めて遺憾。新聞報道に対し、党本部は独自の調査を行うそうだ。

ザ・ウイークリー・プレスネット2023年2月9日号掲載

ザ・ウイークリー・プレスネット
2023年2月9日号掲載

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