
広島大学で活躍する若手研究者たちの挑戦を伝えるシリーズ「広島大学の若手研究者に聞く」。研究者を目指したきっかけや研究の内容、やりがい、これからの目標など、一人一人の挑戦に迫ります。(文・山北)
今回お話を聞いたのは…
広島大学大学院統合生命科学研究科・総合科学部 准教授 小林勇喜さん
「細胞のアンテナ・一次繊毛(いちじせんもう)」が心と体の謎を解き明かす
研究者を目指すきっかけ
幼い頃から自然に囲まれた環境で育ち、生き物が大好きでした。小学生の頃には、七夕の短冊に「研究者になりたい」と書くほど研究者に憧れていました。高校時代に興味深い論文と出会い、「この先生のもとで研究したい」と決意。そのまま夢を追い続けています。
専門分野
専門は、神経科学と内分泌学です。脳や神経の働きと、ホルモンが心や体に伝える仕組みを細胞レベルで解明しています。
研究テーマ・内容
ホルモンなどの情報(鍵)を受け取る細胞の「鍵穴」のような役割をするたんぱく質(受容体)が、細胞のアンテナと呼ばれる「一次繊毛」にも存在することに着目し、その役割や働きを明らかにしています。マウスを使った「強制水泳試験」などさまざまな実験を駆使し、生命の不思議さを解き明かしストレスやうつ病の原因解明、新たな治療法や診断法の開発につながる研究を進めています。

研究成果
これまで受容体は、細胞の表面(細胞膜)にあると考えられてきましたが、一次繊毛にも存在し心や食欲、睡眠、記憶など生命活動を支える重要な役割を担っていることを明らかにしました。さらに、ストレスによって一次線毛が短くなったり消失したりすると、うつ病の発症につながる可能性を発見しました。

世界初の研究
世界で初めて、一次繊毛にある受容体がホルモンにより刺激を受けると、一次繊毛の先端が切り離されて放出される現象を発見しました。放出された小胞には受容体が含まれており、この小胞を介して、細胞同士が新たな情報伝達を行っている可能性もあります。この仕組みは、うつ病の客観的な診断法や新たな創薬につながる可能性があり、生命科学の常識を書き換える研究として期待されています。
今後の目標
一次繊毛を適切な長さや状態に保つ薬剤の開発を目指しています。将来的には、一次繊毛を標的とした新たな治療薬の開発や、血液検査によるうつ病の客観的な診断法の実現につなげるための基礎研究を引き続き進めていきたいです。
■PROFILE
1983年生まれ。神奈川県出身。2011年北里大学より博士(水産学)を取得。日本学術振興会特別研究員 (DC1、PD)を経て、24年より現職。26年からJST創発的研究支援事業(FOREST)研究者 。
プレスネット編集部












