空き家が全国的な課題となる中、東広島市も例外ではありません。相続や管理の負担から放置されるケースも多い一方で、近年はリフォームやリノベーションによる活用にも注目が集まっています。空き家の現状と今後の可能性について、不動産の専門家・牧野知弘さんに話を聞きました。(取材班)

まきの・ともひろ オラガ総研株式会社代表。不動産事業プロデューサー・経済評論家として活躍。東大卒後、銀行・コンサル・三井不動産などを経て独立。ホテル再生や地方創生をテーマにした著書も多数。
収益化以外の空き家の活用は?
地域貢献のツールに
空き家は、売買や賃貸などで収益化を図らなくても、一定の地域貢献のツールとして考えることも大切です。例えば、子ども食堂の場として空き家を提供する人は、全国に広まっています。空き家を地域の家として捉え、地域の憩いの場として活用する例もあります。
行政にできることは?
所有者に改正特措法周知を
今、問題になっている空き家は市場に流通しない物件です。空き家特措法の改正で、管理が行き届いていない空き家は、流動化を促すため、税の優遇措置を外すことができるようになりました。行政には、所有者に法改正を周知し、放置を続ける所有者には一定のペナルティを科す体制づくりが求められます。
東広島市の空き家の現状は?
個人住宅の放置は全国平均上回る
東広島市内の空き家の半数(6700戸強)は、個人住宅です。割合は全国平均よりも高くなっています。個人住宅は賃貸住宅よりも放置されやすく、注意が必要です。空き家の重点エリアを網掛けして、権利変換を促進させ、空き家の流動化を図ることも対策の一例です。
空き家が増加するのはなぜ?
人口減とライフスタイルの変化が要因
一つは2010年を境に人口が減少に転じたこと。もう一つはライフスタイルの変化です。戦後の経済発展で、地方から3大都市圏に人が集まるようになったことが、都市圏への移住の流れを生み出し、地方の空き家問題を顕在化させました。
さらに、大都市圏周辺に住居を構えた家族では、子弟の都心回帰志向が強まり、都市圏周辺の郊外でも、今後、空き家が増えていくことが懸念されています。このように日本の空き家は段階を踏みつつ増えていくと思います。
どうして空き家が〝負動産化〟する?
相続後に放置するから
空き家の問題は、相続をきっかけに発生します。物件を相続した人が、家の管理を怠っても、固定資産税の減免が受けられる理由から、空き家のまま放置するからです。空き家の放置は、ごみの散乱や治安の悪化、火災リスクの増大など、さまざまな問題を引き起こします。
読者プレゼント
空き家対策の必読書として注目を集める牧野知弘さんの著書
「新・空き家問題 2030年に向けての大変化」提供/オラガ総研株式会社

データで見る東広島の空き家

東広島市の空き家等判定数 (令和3年)
●地区別の空き家等の数は、黒瀬地区が最多
●空き家率は、豊栄地区が最大の23.4%
●平成28 年度の実態調査と比較して空き家等の数は5年間で187 軒増加
(注)この実態調査は東広島市によるもので、市内の空き家等判定数は3,947 軒でした。
※空き家率=空き家等数/(世帯数+空き家等数)で算出

