7月17日号「ザ・プレス」の1面では、昨年6月市議会の一般質問について、予算への反映度を、3人の識者に3段階で判定してもらった。本紙論説委員の吉田実篤と、ザ・プレス編集長の日川剛伸が、判定結果について分析。今年6月に行われた議長選にも触れた。
市政動かす提言型質問も
吉田 今回の1面の企画の意図は。
日川 議員の仕事は、執行部のチェックと政策提言・立案の機能。当然、議員を選んだ市民には、議員の思いが高垣市長に届き、予算化されているのかを知らなければならない。昨年6月の一般質問を選んだのは、今年度予算に反映されやすいからだ。
吉田 議員の中には、自らの思想を盛り込んで質問をしたり、間違ったことを平気で質問したりする議員もいる。紙面の質問は編集しているので、市民には二次元コードをかざして全文を読んでほしい。市政に無関心で、偽情報に振り回される市民では、議員の正確な評価はできなくなる。
日川 判定結果を分析してみると、市政を後押しするような質問には〇が付き、市政を追及するような質問には△や×が多かった。
吉田 ただ、市政批判の質問も堅い信条を持ってのことだから、支持者もいる。
日川 二元代表制では、本来、議会は野党であるべき。その意味では〇△の判定が付いた質問にも提言型があった。
吉田 一方で、最近は、高垣市政の本質を問うようなことで盛り上がることが少なくなってきた。議長選も盛り上がりを欠いたようだが。
日川 粛々と奥谷氏が再任された。前回選挙で第三極だった公明党と未来の風が、奥谷氏の2年間の実績(政策提言能力の向上)を評価し、支持をしたのが大きかったようだ。奥谷氏の次の命題は、市民への情報発信の強化だ。
吉田 二元代表制を考えると、次は高垣市長の評価を特集しなければならない。高垣市政では難しい事案が増え、職員もレベルの高さに仕事が追いつかないと聞く。
日川 市長選は来年1月。選挙公約とこれまでの市長会見をリンクさせ、9月のザ・プレスで市政の進み具合をチェックしたい。
東広島市議会 奥谷求氏が議長に再任 副議長は中川修氏
東広島市議会は6月26日の本会議で議長に奥谷求氏(66)(創志会)、副議長に中川修氏(62)(市民クラブ)をそれぞれ選んだ。奥谷氏は再任。中川氏は初めての就任となった。任期は議員間の申し合わせで、議長が2年、副議長が1年。
議長、副議長とも奥谷氏、中川氏の他に立候補者がなく、指名推薦の形で選ばれた。翌27日には監査委員や4常任委員会委員などを決めた。
奥谷氏は当選4回。総務委員会委員長や監査委員、副議長などを歴任。2023年5月~25年6月まで議長を務めた。
中川氏は当選3回。市民経済委員会副委員長、建設委員会委員長を歴任。
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奥谷氏の話「2年前に議長に就任した際に、議会の政策提言能力の向上と、情報発信の強化を掲げた。政策提言については、3議員の一般(代表)質問を提言にまとめ本会議で決議した。今後も精度の高い政策提言を続けたい。議会の情報発信については、まだまだ市民に伝わっていないのが現状。広報紙やユーチューブの発信だけでは限界があり、議会自ら外に出ることが大事だ。
そのためには、議会一丸となって進む議会運営、オール議会を心掛けていきたい」
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監査委員と常任委員会委員は次の通り(敬称略)
【監査委員】北林光昭
【総務委員会】鈴木英士(委員長)、下向智恵子(副委員長)、上田秀、片山貴志、北林光昭、重森佳代子、宮川誠子、石原賢治
【市民経済委員会】田坂武文(委員長)、鍋島勢理(副委員長)、上岡裕明、山田学、向井哲浩、中川修、牧尾良二
【文教厚生委員会】景山浩(委員長)、大下博隆(副委員長)、原田栄二、中曽久勝、岩崎和仁、貞岩敬、谷晴美
【建設委員会】坂元百合子(委員長)、木村輝江(副委員長)、小池恵美子、落海直哉、岡田育三、玉川雅彦、乗越耕司


記者の目
議会と執行部は対等な立場から「二元代表制」と呼ばれる。ただ、議会は執行部の追認機関となり、オール与党化している自治体は多い。
東広島市はどうか。今回、掲載の一般質問の内容を見てほしい。市長の思いをくみながらも、一歩踏み込んだ提言を盛り込み、予算に結び付けた質問や、議員の質問が市政を動かした案件もあった。2年前から取り組んできた政策立案の向上が実を結びつつあり、東広島は「二元代表制」が機能しつつあるといえよう。
一方で、SNS(会員制交流サイト)全盛の今、アクセス数欲しさに確信的な「フェイク(偽)情報」に振り回されて質問する政治家もおり、哀れだが、そのつけは、市民にも返ってくる。まさに悪循環だ。
今、東広島市が取り組む施策は何なのか。市政には、議員の質問のように優先順位があることをお忘れなく。
(日川)
デジタルデータで紐解く!
東広島市議会(本会議場)公式YouTubeチャンネル
■チャンネル登録者数/473人
■動画数/347本
■今年アップされた動画/35本
※2025年2月の第1回定例会から6月の第2回定例会5日目まで
■総視聴数/3,355回
■平均視聴/96回
2025年7月4日現在。プレスネット調べ
東広島市議会全員(30人)のデジタルツールの利用を調べた。7ツールのうち一ツールでも使用している割合は30~40代の若手議員6人で56%、50代以上の24人は44%だった。50代以上のうち、13人は一切のツールを使用していなかった。
(荒木)
