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(WED)

建設業、不動産業界の「これ、どうにかならないの?」の声 政治家に聞いてみた!

  • 2022/04/05
  • 2022/04/27

―東広島の土地利用計画への提言―

 マイクロンメモリジャパンが新工場を建設する報道が出たり、大型ショッピングセンターが開業を予定したりするなど、東広島の経済発展は目覚ましいものがある。その半面、土地の開発に関しての規制は厳しく、建設業、不動産業界からの不満も多い。斉藤鉄夫国土交通大臣、新谷正義自民党副幹事長、高垣広徳東広島市長に業界関係者の思いをくみ取りながら土地政策の質問をぶつけてみた。

斉藤鉄夫 国土交通大臣

斉藤鉄夫 国土交通大臣

「実態に即した土地利用の議論を」

 ―建設業者や不動産業者からは、現在の土地利用の線引きについて見直しを求める声が多く寄せられています。現状の市の土地利用を定めた土地計画についての見解は。

 

 都市計画決定権者である広島県が、無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るために、東広島市の意見を踏まえて決定する、いわゆる「線引き」については、時代の変化とともに望まれる土地利用の在り方が変化しているのも事実。このため、工業系や商業系の土地利用のニーズに対しては、無秩序な市街化とならないよう、工業等の立地動向を踏まえた計画的な土地利用の在り方について、広島県と東広島市において現状の実態に合う議論をしていただくことが重要であると考える。

 

 ―東広島市は、人口の微増が続く県内でもまれな自治体です。ただ、建築可能な用地が少なく、東広島に住みたいのに、家を建てることを諦めるケースがあるようです。一方、東広島市は県内屈指の米どころで、農業振興地域が多くの割合を占めます。ただ、近年は耕作放棄地が目立つようになり、有効な土地利用が図られていないのが現状です。これら東広島市固有の課題に対しては、どのように認識していますか。

 

 市街化調整区域は市街化を抑制すべき区域であり、一般的に道路等の公共施設の整備が不十分な地域であることが多くなっている。そのような場所で無秩序に住宅開発がされることは、良好な住環境の確保の観点から望ましくなく、東広島市においても、公共施設の整備を伴う、計画的な開発が求められている。

 

 また、東広島市は、市域の6割以上が森林等の自然的な土地利用となっており、残りの3割程度が、宅地等の都市的土地利用と農地等の農業的土地利用となっていると承知している。

 

 このような農業的土地利用地域で住宅開発を行う場合には、農林部局と調整し、農業や自然との調和のとれた土地利用を前提に住宅や産業団地のニーズに応えていただきたいと考える。

 

 ―土地利用の課題解決には、線引きの見直しを含めた規制緩和が欠かせません。東広島市にふさわしい土地利用計画について、具体的な提言をお願いします。

 

 線引きの見直しについては、無秩序な市街化とならないよう、工業等の立地動向を踏まえた計画的な市街化を図ることが重要であり、広島県において、東広島市の意見を聞きながら、市街化区域の拡大の可否について適切に判断していただくことになる。

 

 ―東広島市は、DXを活用したスマートシティ構想を掲げています。業者や市民がウインウインになるような土地利用計画の実現のためには何が必要でしょうか。

 

 国土交通省では、新技術や官民データを活かし、都市・地域の課題解決や新たな価値の創出等に向けて、関係府省と連携し、スマートシティの実装に向けた取り組みを推進している。

 

 スマートシティを推進するため、自治体、民間企業への導入書としてスマートシティガイドブックを関係府省と連携し昨年4月にとりまとめた。

 

 このガイドブックにおいて、スマートシティの基本理念として▽市民目線を意識し、市民自らの主体的な取組を重視すること(市民中心主義)▽「新技術」ありきではなく、「課題の解決、ビジョンの実現」を重視すること(ビジョン・課題フォーカス)―を掲げており、スマートシティの実現に向けて、こうした視点を官民連携で進めていくことが重要だ。

 

 また、国土交通省では、官民連携によるスマートシティの先進事例を創出すべく、スマートシティモデルプロジェクトとして全国50を超える地域に対する財政支援及びハンズオン支援を実施、今後も地域のスマートシティの実装に向けた取り組みを支援していきたい。

新谷正義 自民党副幹事長

新谷正義 自民党副幹事長

「市民・事業者の意見を大切に」

 ―建設業者や不動産業者からは、現在の土地利用の線引きについて見直しを求める声が多く寄せられています。現状の市の土地利用を定めた土地計画についての見解は。

 

 国としては、土地計画は地方自治体において策定されるものと承知している。わが国において産業の発展とともに、農地の保護、農業の保全も必要不可欠であると考える。そのため、都市計画法に基づく線引きがなされており、計画なき開発を抑制しているが、時代の変化とともに望まれる土地利用の在り方が変化しているのも事実。その中で、「市街化区域内」「市街化調整区域内」においてもしっかりと地区計画を策定し、県の定める要件を満たす場合は開発が許可される場合があり、現状の実態に合う計画を策定することが重要であると考える。

 

 ―東広島市は、人口の微増が続く県内でもまれな自治体です。ただ、建築可能な用地が少なく、東広島に住みたいのに、家を建てることを諦めるケースがあるようです。一方、東広島市は県内屈指の米どころで、農業振興地域が多くの割合を占めます。ただ、近年は耕作放棄地が目立つようになり、有効な土地利用が図られていないのが現状です。これら東広島市固有の課題に対しては、どのように認識していますか。

 

 人口増に対する住宅用地の確保は急務。住宅にはインフラの整備が必要。水道・電気等、現代の生活に不可欠なインフラは引き続きの整備が求められる。耕作放棄地に関しては、耕作放棄地はあくまで、耕作の意思が見られないことが要件であり、荒廃農地とは異なる。よって一見営農が行われていなくても、農業を再開する可能性があり、これらを加味した上での計画策定が必要となる。また、耕作放棄地であっても、他の農地に関わる水路やため池が近隣にある場合も散見され、これらの保全に関しても計画に考慮していただき、適正に住宅地や産業用地のニーズに応えていただきたい。

 

 ―土地利用の課題解決には、線引きの見直しを含めた規制緩和が欠かせません。東広島市にふさわしい土地利用計画について、具体的な提言をお話してください。

 

 線引きに関しては、定期的な見直しが行われている。人口増加に伴うニーズに応える必要もあり、市民の皆さまの声を反映すべく随時協議が行われているものと承知している。現状に合ったものとしていくため、住民の皆さまや関係する団体、あるいは業界団体からの意見を所管の部署に適切に届けていくことが重要だと考えている。国会議員としては、農林水産省、総務省など、関係省庁と細かく協議をしつつ、地元の皆さまに寄り添いご要望に応えるべく、全力を尽くしていく。

 

 ―東広島市は、DXを活用したスマートシティ構想を掲げています。業者や市民がウインウインになるような土地利用計画の実現のためには何が必要でしょうか。

 

 現在の日本においては、新型コロナウイルス感染症のまん延や災害など、住民の皆さまの常の生活を脅かす事が頻発している。これらの対策をしっかりと進めていくことが最重要。その上で、デジタル田園都市構想に欠かせない5Gや高速通信網の整備はもちろんのこと、局所的な高速通信を可能とするローカル5Gを活用し、スマート農業など、新しい事業や価値が生まれてくるよう、国・県・市を挙げて下支えをしていく必要がある。東広島の特性を生かしつつ、地域を活性化するためには今一層の産官学連携が不可欠。国としても、地域の発展を促すためにも、住民や県・市と綿密に協議をしつつ、デジタル田園都市構想にのっとった土地利用開発を考えていきたい。

高垣広徳 東広島市長

高垣広徳 東広島市長

「市街化区域の高度利用を」

 ―東広島市内の市街化区域は約8・5%です。不動産業者からは、開発できる用地が不足している、という指摘もあります。

 

 指摘のように、市街化区域内では、特に工業系の用地が少なく、すべての要望に応えられていないことは認識している。東広島市は、今後の人口や産業の見通し(フレーム)の一定の成長が予測されており、今後も必要に応じて、市街化区域を拡大していく。

 

 一方で、市街化区域の面積当たりの人口密度は、広島市の半分程度。決して東広島市の市街化区域の割合が低いとは思っていない。容積率を高く設定できる市街化区域の利点を生かし、市街化の高度利用を図れば、まだまだ人口を収容することができる。

 

 ―現状の市街化調整区域内の開発についての考えは。

 

 市では、市街化区域に隣接・近接している区域を対象に、特例的に住宅などの開発を認める50戸連たん制度や、民間事業者から開発の相談があった場合に、市街化区域編入の線引きを待つことなく、開発が可能となる地区計画制度で、市の人口増や事業者の進出に、一定の役割を果たしてきた、と認識している。言い換えると選ばれる都市になっているということだ。

 

 ただ、市街化調整区域内の土地利用については、農地の保全や、人命の安全、土砂流出の抑制などの観点から、農振農用地や土砂災害特別警戒区域、保安林などの規制を安易に緩和すべきではないと考えている。本来、市街化を抑制すべき市街化調整区域では、法律の許可を必要とする開発や建築は控えるべきで、やむなく開発や建築をする場合は、一定の防災・安全対策が必要となる。近年、多発する災害を踏まえるとなおさらだ。

 

 ―東広島市内の住宅着工件数は年間で500~600戸あり、市内には多くの住宅メーカーが進出しています。その需要に応えるための対策は。

 

 先ほどの土地の高度利用と合わせ、市街化区域には、耕作放棄地を中心に約150~180へクタールの未利用地がある。十分に需要に応えられると思っている。

 

 50戸連たん制度は確かに法に則した手続きではあるものの、面積要件の条件がないため、公園や調整池の整備を必要としない無秩序な小規模開発を誘発することにもなりかねないことも理解してほしい。

 

 ―事業者からは開発に際し、規制が厳しいという指摘や、事務手続きにスピード感を持って取り組んでほしいという指摘もあります。

 

 志和地区や吉川地区では、市街化調整区域の規制が厳しいとの意見をいただいている。このため、これまでも「賃貸住宅の道路要件の緩和」「既存工場の自社拡張」などの規制緩和を行ってきた。これからも人口が減少している市街化調整区域内では、開発許可基準の緩和を検討していく。

 

 事業者からは、成約寸前なのに、なぜ開発許可が下りないのか、という指摘をいただくことがある。ただ、土地利用は、周辺を含めたまちづくりとの整合性をみながら、事業者のスポット開発が適性かどうかを判断する必要がある。時間がかかることは理解してもらいたいし、改善できることは改善し、スピード感を持って取り組めるようしたい。

 

 ―将来を見据えての東広島の土地利用計画についての思いは。

 

 東広島市は、面積だけをみれば40~50万都市になりうるが、土地があるから市街化区域を拡大できる、という簡単なものではない。インフラ整備の進展は東広島をさらにポテンシャルの高いまちにする可能性を秘めているが、そのためには2020年に策定した第五次総合計画の人口フレーム(30年推計で20万2000人)にのっとって、下水道などの都市基盤整備と合わせた現実感あるまちを計画的につくっていかなければならない。

用語解説

市街化区域と市街化調整区域

 東広島市では、旧市(西条・高屋・八本松・志和)全域と、黒瀬全域・安芸津・河内の一部を、計画的な土地利用を図るため、都市計画区域に指定、そのうち、安芸津・河内を除く区域について、市街化を促進したい区域を「市街化区域」、市街化を抑制し農地を保全したい区域を「市街化調整区域」に分ける、いわゆる線引きを行っている。

 現在、都市計画区域のうち、約8.5%の約3000へクタールが市街化区域になっている。線引きは、おおむね5年~10年に1回、見直している。

50戸連たん制度

 市街化区域に隣接、または近接している市街化調整区域で、特例的に開発や建築を認める制度。東広島市では、県条例の制定を受け、2003年から制度の運用を行っている(2006年からは市条例による運営)。市街化区域から1キロ以内の概ね7へクタールの範囲内で、50戸以上の建築物の連たんが成立する区域を対象としている。

 市の人口増に寄与するメリットの半面、市郊外で無秩序な小規模開発が誘発される、スプロール化の課題などが指摘されている。

市街化調整区域における地区計画制度

 市街化調整区域内で、民間開発が具体的になった段階で、定期的に行われる線引きの見直し時期を待つことなく、一定の要件のもと地区計画を定めることで工業系、商業系、住居系の開発が可能となる制度。

 例えば、東広島市では工業系については、インターチェンジ周辺区域(概ね1キロ以内)で2へクタール以上の開発面積があることなどを要件に、企業立地を可能にしている。これまで地区計画を用いた民間の開発事例は工業系が5件、商業系が7件。

建設業、不動産業界のリアルな声

●東広島市に建築可能な土地が無いのは他の市町でも有名です。東広島に住みたいけどあきらめて他の市町に家を建てるのはよく聞いています。コンパクトシティの考え方は良いですが、コンパクト過ぎて困っています。

 

●県単位で言うと旧入札指名制度の名残で東広島は(東部の尾道、北部の三次、庄原等)の近距離の入札に参加できなく西部地区でも入りづらく入札条件が不条理に思う。東広島市は公平性ということで入札参加条件が広すぎて地元業者は優位性がない。

 

●事業用用地と倉庫や工場の建設といった相談が多いが、対応できる土地・用途地域が少なくニーズに応えられていないケースが相談件数の50%もある現状。

 

●家が建つことは、経済が回ることに直結します。経済を回すためにも、家を建てたい人にとっての支援が今以上に必要だと思います。国は、住まい給付金やグリーン住宅ポイント、住宅ローン控除延長など家を建てたい人を後押しする施策を行っています。そのような施策で建築を決める方もいらっしゃいます。市としてそのような施策を行っていただければ、他の市から東広島への移転も増え発展して行くのではないでしょうか。そのためには、東広島で家を建てられる土地の拡充も必要だと思います。

 

●市街化区域内のライフラインの充実と市街化調整区域内の既存団地内の(下水道設備は無理だとしても、せめて)上水道の設備。昔からの井戸水使用者は、そのまま使用可能として(井戸を掘る費用負担を個人でされているので)新しい土地購入者向けに前面道路埋設上水道設備をお願いしたいです。都会からの転居先として調整区域の問い合わせがありますが井戸を掘らなければならない、掘った後の検査があるなどがネックとなっています。井戸を掘るための補助金設定を要望します。

 

●朝・夕の山陽道や志和ICの混雑は2019年ごろにはなかった事。2号線バイパスと磯松正力地区のスマートICの早期開通を望む。道照交差点など幹線道からの右折ラインの増設を早期に願う。

 

●市街化区域では、地主は土地を売らないし、所有権者にたどりつけない土地も多い。市長にはこの実態を分かってもらいたい。

 

●法律を盾に取って頭ごなしに開発許可にNOを言う窓口の対応はどうかと思う。ケースバイケースで開発が可能なら、もう少し分かるようにしてほしいし、マイクロンメモリジャパンのように、開発がスムーズに進むよう、市職員も一緒になって考えてほしい。

記者の目

杓子(しゃくし)定規で是非を判断しない姿勢を

 地権者との交渉や資金繰り、各種法律の規制解除など、開発までに相当の手間と時間を要する―。「開発できない区域だから」と、行政から門前払いされるケースがある―。行政に提出する書類が他市町に比べて多い―。民間主導の土地開発に際し、東広島の事業者が口にしたキーワードだ。

 

 一方で、高垣市長がインタビューで話したことは、まさに正論である。多発する災害や、無秩序な開発が散見されている現状を思うとき、時代に合った土地利用の仕組みに転換することは当然だからだ。

 

 両者の言い分を踏まえた上で、行政側には①職員のサポート体制の充実②杓子定規で是非を判断しない―の2点を提言する。①については、法律のアミが無数にかかる土地開発は、行政の本気の後押しなくしては、事がスムーズに運ばないからだ。土地開発にワンストップで対応できる専門の行政組織を早急に作るべきだ。②は、「できないことはできない」と頭ごなしに否定するのではなく事業者、行政双方がウィンウィンとなるような解決策を、一緒になって知恵を絞ることも必要だろう。

 

 企業が進出し人口が増加する土地開発は、市税収入となって表れ、市の財産を構築、魅力的なまちをつくる礎にもなる。土地開発の本質が、そこにあることを忘れてはならない。

 

(日川剛伸)

 

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