黒瀬高福祉科3年の正藤風花さんは、令和3年度全国福祉高等学校長会主催の生徒体験発表に広島県代表として出場。発表した作文が中国地区代表2作品のうちの一つに選ばれ、全国9地区18作品から1位に選ばれた。作文の表題は「見えないからこそ見える介護」。正藤さんは「自分の体験がこのような形になってとてもうれしい。多くの人に読んでもらいたい」と語る。(小林)
正藤さんが高校2年生の夏、介護実習で出会ったMさんは、他の利用者と関わらず孤立していた。両目がほとんど開けられない病気のために、人と話すことを諦めてしまっていたMさんに、たくさん話し掛けようと心に決めた。自分にできることを考え、話し掛けるときには、まず名前を名乗ることや、少し大げさな相づちを打つなど、安心してもらえるように工夫した。「昔のことを思い出して楽しい気持ちになってほしい」と、かつて見た花火の思い出を、手を添えながら絵に描いたりもした。
そんな正藤さんとの交流を通して、Mさんは徐々に心を開くようになり、名前を呼んでくれるようになったという。
実習最終日、Mさんは開きにくい目を一生懸命開いて、正藤さんを見つめた。 17日間の実習で初めてのことだった。互いに目を合わせて話していると、驚きと喜びで涙が止まらなかった。Mさんも涙を流しながら、「あなたのことずっと忘れないよ」と言って抱き寄せてくれた。
Mさんに対して何もしてあげられなかったと悩んでいた正藤さんの心に、光が差した瞬間だった。何もできなくても、相手に思いを寄せることも一つの支援だということを知り、「介護の奥深さに気付いた」と話す。
「見えないからこそ見えるものがある」。介護を受ける人が安心できる温かい環境づくりのために、見えないことにも目を向けられる介護福祉士を目指す、という。
10月には第31回全国産業教育フェア埼玉大会でも発表する。黒瀬高校のホームページでは、正藤さんが作文を発表している動画を公開している。
正藤さんの目指すもの
幼いころからの憧れ
正藤さんの父は介護福祉士。
小さい頃からその姿を見て、憧れを抱いていました。
その気持ちを大切にしながら、中学に入ると自らも介護福祉士の道に進むことを決意。
福祉科のある黒瀬高校を受験しました。
学校では、福祉・医療の基礎知識や、介護の制度などについて幅広く学んでいます。
また、実習では介護現場を経験。実務に触れています。
今回の作文は、そのときの経験をしたためています。
来年1月には介護福祉士国家試験を受験。
正藤さんは「必ず合格して、さらに大学で社会福祉を学び、卒業後は介護福祉士として働きたい」と話します。